夕凪中2年B組の昼休み。
咲と舞、満と薫は今日も今日とて、お弁当を一緒に食べた後に
咲の机の周りで雑談をしていた。
と、そこに寄ってくるクラスメイトが一人。

「ねえねえ! 良かったらちょっと手伝ってくれない?」
安藤加代がこんなことを言ってくるのは珍しい。
彼女が手にした箱の中にはいっぱいの折り紙が入っている。

「何なに?」
咲が興味津々といった顔で覗き込む。

「折り紙を折るの手伝ってほしいの。今度、図書館の子供会で
 来てくれた子に配ろうと思って」
そう言いながら加代はどさりと箱を置く。

「何を作るの?」
舞がきょとんとした表情を浮かべると、
「風車にしようと思って。走って遊べるし」
「風車――」
昔折り紙で作ったことはある。でも、どんな折り方だっけと舞は思い出そうとしていた。

「えっと……折り紙で風車って作れるんだっけ?」
「日向さん折ったことないの?」
咲の言葉に加代はやや呆れた様な声を上げた。
満と薫はといえば、折り紙で風車ということ自体よく分かっていないらしく
きょとんとした表情で目の前の箱を見ている。

「ここに折り方があるからこれを参考にしたらできるはずだけど――」
加代が取り出した作り方を舞は見て、
「あ、そうね。こんな感じだったわ」
と呟く。
「美翔さん折ったことある?」
「小さい頃に、何度か」
「良かった」
加代はほっと安心したようで、
「じゃあ、頼んでもいい? この折り紙全部使うくらいたくさん作ってほしいの」
柄についてはストローを使う予定だがそれは後でつけるから、とにかく折り紙で
羽根の部分をたくさん作ってもらえたらと加代は言って、自分の席に戻って行った。加代の席にも同じような箱が置いてある。
今から折るのだろう。

舞は加代が置いて行った説明書をもう一度よく読んでから、折り紙を一枚取り出す。
「えーっと……」
咲も満も薫もその手元を真剣な表情で見つめている。

舞は説明書を見ながら記憶をたどりつつ、糊と鋏も使って一つ目の風車の羽根を折り上げた。
「できたわ」
「さっすが舞!」
咲は感嘆の声を上げる。満と薫は、まだきょとんとした表情を浮かべている。

「綺麗だと思うけど、これはどうやって遊ぶものなの?」
薫が尋ねる。

「あ、これはね。柄につけて……えーっと、」
舞は机の中から割り箸を引っ張りだしてきた。鞄の中から安全ピンを出して、
風車の羽根を割り箸に仮止めする。

「ほらこうやって、風を当てると」
羽根の部分にふっと息を吹きかけると、風車がくるくる回る。
軽く回るその様子に、あ、と満と薫は声を上げた。

「ね、こうやって風を受けて遊ぶものなのよ」
「よーっし、じゃあ作ろう!」
咲は早速箱から折り紙を一枚出すと、説明書を見ながら先ほどの
舞の手つきを思い出しつつ折り始めようとする。
とそこに、
「フープも風車見たいププ」
という細い声が咲の鞄の中から聞こえてきた。
思わず四人は顔を見合わせる。
「あ、えっと……」
どうしよう、と咲は一瞬悩んだが、
「屋上行って折ろうか」
と舞たち三人の顔を見た。三人とも同時に頷く。
咲と舞は精霊たちの入った鞄を持って、満は折り紙の箱を持って、
薫は先ほど舞が作った風車と説明書を持って、一同は屋上に向かった。


思った通り、屋上には誰もいなかった。
「はい、フープ」
咲が鞄を開けるとムープとフープが飛び出してくる。フラッピとチョッピも、
コミューンから元の姿に戻った。

「風車見せてププ!」
「はいはい」
舞は薫から風車を受け取ってフープに渡す。
「くるくる回るププ!」
フープは大喜びで風車を持って空に飛んで行った。
「待ってムプ〜!」
ムープがそんなフープを追いかける。
フラッピとチョッピはそんなふたりを追いかけるようにちょこちょこと
屋上を走り回っていた。

そんな喧騒をよそに、咲たちは再び風車を作り始める。

「うーん、意外と難しいなあこれ」
「そうね、何か結構……」
「舞、少しゆっくり折ってくれる?」
咲と満と薫に口々に言われて、舞は一つ一つの手順を確認するように
ゆっくり折り始める。
他の三人はそれを見ながら順番に折る。

やがて、
「できた!」
と咲が声をあげると、フープがぴゅんと飛んできた。

「それだと左右が歪んでるから、うまく回らないププ」
と咲の風車を見て言う。
「え、そう?」
「そうププ」
フープはさらに満の風車を見ると、
「もう少し風を含む部分を大きくした方がきれいに回るププ」
と言い、薫の風車を見て、
「これだと綺麗に回りそうププ」
と判断を下す。

「ねえフープ、何か厳しくない?」
新しい折り紙を手に取りながら咲がぼやくと、
「フープは風のことなら何でも分かるププ」
と少し得意げに答える。

「あーもう。じゃあ、どんな風に作ればいいか教えてよ」
それから昼休みが終わるまでの間、一同はフープにいろいろ言われながら
風車の羽根を作り続けたのだった。

-完-

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