希望はかなうばかりではないし、運命は変えられるとは限らない。
咲と舞はそのことをいやというほど思い知らされた。霧生満と霧生薫。
咲と舞を倒すために滅びの国ダークフォールからやって来た刺客。
二人はそんなこととは知らなかった。満と薫は自分たちの友達だと思っていた。
……そして、満と薫にもそれは通じていた。満と薫も、咲と舞と戦おうとはしたものの
最終的には戦うのを止めてくれた。だが四人が友達だということは
ダークフォールに通じる理屈ではなかった。
「……」
咲の部屋からはきれいな月が見える。妹のみのりは今お風呂に入っている。
みのりがいる時はこんなに元気のない顔は見せられない。窓枠に肘をつき、
咲はぼんやりと月を眺めていた。
「ラピ……」
咲の背後にある机の上でフラッピがぽんと音を立ててコミューンから元の姿に戻る。
ムープとフープもコミューンから外に出てきた。普段は騒がしい精霊たちも、
咲がこんな様子の時は静かに咲のことを見守っている。
「咲、何考えてるラピ?」
やがてフラッピが口を開いた。えへへ、と咲は力なく笑った。
「満と薫のこと。二人に、いつ会えるんだろうって考えちゃうんだよね……どうしても」
満と薫は、まだダークフォールにいる。それは確かだ。だが二人を救い出すことは容易ではない。
「でも、二人はダークフォールにいるムプ!」
「だから絶対会えるププ!」
ムープとフープがふわりと飛んできて咲の腕の中にすとんと納まってきた。
「うん、そうだよね……」
咲は精霊たちと一緒に月を見上げた。

* * *

夏にしては涼しい風が窓を開けた舞の部屋に吹き込んでくる。
「三、四、五、……」
舞は机の上に広げた種を数えでは十ずつ小さい袋に入れていた。
「舞、何してるチョピ?」
「種を分けてるのよ」
と舞は数え終わったばかりの十粒を新しい小袋に入れた。
「種チョピ?」
「うん。ひまわりの種、もう乾いたから……」
咲と舞は今年、一緒にひまわりを育てていた。種まきの時期は満と薫が転校してきて
少し経った頃だったので、二人のことも誘った。二人ともひまわりを一緒に育ててくれた。
ひまわりが病気になった時、満と薫はもう諦めた方がいいと言いたそうだった。
でも咲と舞が薬をかけて何とか立ち直らせようとしていたら結局協力してくれた。
「プリキュア」のことを探るために一緒に行動していただけだと、満と薫はそう言うかもしれない。
(でも……)
と、舞は思う。満さんと薫さんも、きっと内心ではひまわりが咲くのを楽しみに
していたのに違いないと。
十ずつに分けたひまわりの種の袋をさらに束にして、舞は四つの袋に種を分けた。
「どうして四つに分けるチョピ?」
「咲のと私のと……それに、満さんと薫さんのよ」
これは四人で育てたひまわりがつけた種だ。育てたひまわりのうち、
一本は種をつけたので集めて乾かした。この種を使えばまた来年ひまわりを植えることができる。
「来年も四人でひまわり育てるチョピ?」
「ええ。……必ず」
来年は満と薫の二人にもひまわりを最後まで見届けてもらわなければいけない。
種を取って、乾燥させてそのまた来年のために取っておくところまでちゃんと
見てもらわないといけない。舞はそう思いながら、四つの袋を涼しい場所に保管した。

咲と舞の希望は、いずれかなう。咲と舞自身の力がその希望を実現する。
だがこの時の二人はそのことをまだ知らない。

-完-

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