冥王せつなに目覚まし時計は必要ない。眠る前に、何時に起きようと決めておけば
翌朝にはその通りの時間に目が覚める。
この日も、せつなは決めていた通りの時間に目が覚めた。

「ん……」
布団から腕だけ出して、それから起き上がろうとすると
きゅっと何かが身体に絡みついてくる。
「ほたる?」
普段は、ほたるは一人で寝ている。今日せつなのベッドにほたるがいるのは、
昨日の夜どうしてもここで寝るといって聞かなかったからだ。

いつもだったら、「自分の部屋で寝なさい」と言ってせつなはほたるの言うことに
とりあわなかっただろう。何となく許してしまったのは今がお正月だから――
どこか特別で、どこかゆったりとした休日気分になっていたからかもしれない。
ほたると一緒に寝るのは久しぶりだ。

「まだあなたは寝ていていいわ」
私は、起きるから。そう言ってせつなはほたるの手を自分の身体から
どけようとしたが、
「んー」
とほたるは目を閉じたままで更にしがみついてくる。
「ほたる?」
せつなはまたほたるの腕を動かそうとする。だがほたるも意地になっているかのように
腕をどけようとはしない。

「せつなママ?」
ほたるは目を閉じたままで、まだ半分は夢の中にいるような口調で
せつなの名前を呼んだ。
「何です?」
「今日ぐらい……朝ゆっくりしてようよ……」
昨日の元旦は、ちびうさ達と初詣の約束があったので朝まだ暗いうちに出掛けた。
だから、朝寝ができる正月休みは今日が初めてだ。
みちるは海外で行われるニューイヤーコンサートに出演し、はるかもみちるについて
行っているので、二人が帰ってくるのは4日になる。

だから、今日明日はせつなとほたるの二人きりだ。
そうはいっても、
「ほたる、あなたは寝ていて。私は」
せつなはまた起き上がろうとしたが、
「やだ」
とほたるに身体を引っ張られる。その口調はもうすっかり起きているのではないかと
思われたが、目はまだ閉じたままだ。

「ほたる?」
せつながまた布団の中に身体をうずめると、ほたるが今度は全身で抱きついてくる。
「何かあったの?」
昨日は初詣に行って楽しんだだけで特に何もなかったような気がするが、
とせつなが思い出していると、
「ん……何もないよ」
と言ってほたるがようやく目を薄く開けた。

「何もないけど、こんな風にのんびりできるのって一年の内でも
 お正月くらいなんだし。はるかパパにも言われてるし」
「え?」
「『正月くらいせつなのんびりさせてやれよ』ってはるかパパ言ってたもん」
はるかがどうしてそんなことを言ったのかせつなは意外に思ったが、

「せつなママにみんないっつも甘えてるから、お正月は少し休んでほしいんだって。
 みちるママもそう言ってた」
「そんなこと気にしなくても」
「それに」
ほたるの紫の瞳がようやく大きく開いた。

「こうしてた方があったかいし」
そう言って、顔をせつなの胸に押し付ける。
「暖房代わり?」
せつながそう聞いたが、ほたるは聞こえていないふりをして目を閉じた。
娘のそんな様子にせつなは一つため息をついたが、もう少しだけ彼女の言うとおりに
しようかと思って目を閉じてベッドにしっかりと身を横たえた。

-完-

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