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「終ったの?」
四つ葉町のテレビ局の建物の屋上では薫が満を待っていた。ラブたちとの話を終えた満が
とん、と薫のすぐ横に降り立つ。
「ええ。話してきたわ」
満が戦闘服姿から夕凪中の制服姿に戻る。それを見て薫も変身を解除した。
「少しお節介だったような気もするけど……」
薫の言葉に満も無言で頷く。
「こういうの、咲と舞がやることみたいよね。まあ、でも」
大丈夫そうだった? と薫が尋ねると満は「たぶん」と答える。
「咲や舞みたいに、あの子のこと守ろうとしてくれるんじゃないかしらね……多分」
「そう」
制服姿の二人の身体がふわりと宙に浮かんだ。
「ねえ、薫?」
「ん?」
二人の身体は夕凪町に向けてゆっくりと空中を散歩する。
「私……手紙、書いてみようかなって思うの」
「……アクダイカーン様のこと?」
唐突な自分の言葉を薫がきちんと理解してくれたので満は少し嬉しくなった。
「ええ。少しだけ、勇気を出してみようかと思って。何となくそういう気持ちになったの」
本当に届けられるかどうかは分からないけれど、と満は保留めいた言葉を口にした。
「薫はどうする?」
「そうね……」
薫は少し考えたが、
「私も書いてみるわ」
と答えた。
「じゃあ、帰りに文房具屋さんに寄っていかない? 便箋と封筒、用意しなくちゃ」
「ええ」
二人は夕凪町商店街の近くに急降下した。

    * *

「えーっと、咲咲咲……」
帰ってきたラブは携帯電話のアドレス帳を操作して「日向咲」の番号を出す。
これからプリキュアみんなに電話してせつなのことを教えるつもりだ。
咲たちはもう知っていそうな気もしたが、まず一番に咲にかけてみることにした。

「あ、もしもし、咲さんの友達の桃園ラブと申しますが咲さんは……」
保留音の後しばらくして
「もしもし! ラブ、久しぶり!」
という咲の声が受話器から聞こえてきた。
「久しぶり。あのね、テレビで観たかもしれないけど」
「うんうん、観た観た! 新しいプリキュアが現れたんでしょ?」
「そうそう。せつななんだけど」
「え、せつな!? そうなんだ!?」
受話器の向こうの咲が驚いているのが伝わってくる。
「あれ、知らなかった? 満が今日来たから、咲たちも知ってるのかと思ってたんだけど」
「今日、満がラブたちのところに行ってたの?」
「うん。私たちのこと気にしてくれてたみたい」
「へえ、そうだったんだ〜。ずるいなあ満。私たちもせつなさんに会ってみたいのに」
「今度、せつなのことプリキュアみんなに紹介したいと思ってるんだけど。
 もうすぐ夏休みだし……」
「あ! それいい!」
咲の声にラブの顔にも笑顔が浮かぶ。
「じゃあさ、夏休みまたみんなで会おうよ! せつなさんも一緒に!」
「うん、じゃあまた連絡するね」
「うん、よろしく〜」
電話を切ると、次にのぞみの電話番号を探す。

「もしもしー、ラブちゃん久しぶりだね!」
のぞみの声もやっぱり元気だ。
「うん、久しぶり! 今日はちょっとニュースがあって……」
「ニュース?」
「うん。あのね、四人目のプリキュアが現れて」
「えーっ!? すごいすごい! また仲間が増えたんだ!」
「うん。せつなっていう子なんだけど、みんなにも紹介したくて」
「あ、ちょうど良かった!」
渡りに船とばかりにのぞみが嬉しそうな声を上げた。
「もうすぐみんな夏休みでしょ? プリキュアみんなであつまってかれんさんの別荘で  『プリキュア合宿』やりたいねって話してたところなんだよ!」
「べ、別荘!?」
「うん、別荘! かれんさん家の別荘って本当にすごいんだよ! せつなさんもその時一緒に来てくれたらいいんじゃないかな」
「うん、せつなも喜びそう」
「じゃあ、どこの別荘かとか、決まったらまた連絡するね!」
「うん、お願い! じゃあまた!」
別荘なんて言葉を聞くと気持ちが沸き立つ。海だったらせつなの水着も選ばなくちゃ
、なんてことを思いながらラブは携帯電話のボタンを一つ押した。
「夢原のぞみ」の一つ前には「雪城ほのか」が登録されている。


「ラブさん、お久しぶりね」
咲やのぞみの後だとほのかの声はぐっと大人びて落ち着いている。
釣られるようにしてラブの口調も落ち着いたものになった。
「お久しぶりです。今日はちょっとニュースがあって……」
「ニュース?」
「私たちの仲間が増えたんです。四人目のプリキュアが現れて」
「へえ……」
「せつなっていう子なんですけど」
「あ、名前聞いたことあるわ。ラブさんの友達だったかしら?」
「ええ、友達です。実は……」
ほのかの穏やかな声を聞いていてラブは思わず口を滑らせた。
本当はここまで言うつもりはまだなかったのだけれど。
「実は?」
「実は、元々はラビリンスって、私たちの敵だったんですけど……ちょうど、
 満や薫みたいな感じなんです」
「ええ!? そうなの!?」
「ええ、そうなんです。本人もまだこっちの生活にあまり慣れていないんですけど」
ラブは簡単にイースとの戦いについて話した。ほのかは黙って聞いていた。
「それで今度、プリキュアのみんなにも紹介したいと思っていて」
「ええ、私も会いたいわ」
「のぞみ達が合宿とか計画しているみたいなので、その時には絶対連れて行きますね!」
「合宿?」
「そのうち連絡が行くと思いますよ。夏休みにプリキュア合宿をしようって、
 さっき電話したら言ってたんです」
「へえ。なぎさもひかりさんもきっと喜ぶわ」
「ええ、じゃあその時に!」
「そうね。……ラブさん?」
「はい?」
ほのかの声が真剣さを帯びたのでラブは思わず受話器をぎゅっと耳に押し当てた。
「……良かったわね。せつなさん。一緒にプリキュアになれて」
「はい!」
「じゃあ、また今度ね。せつなさんに会えるのは合宿の時になるのかしら」
「はい、絶対連れて行きます!」
ほのかとラブの間の会話はここで終った。
ほのかは受話器をそっと戻すと胸の前できゅっと手を握り締める。
――良かったわね……。
ほのかは再度そう思った。せつなという少女には会ったこともないが、それでもほのかは嬉しかった。

ほのか自身も一時は敵として戦った少年に、戦うのを止めるよう説得したことがある。
彼が本当にドツクゾーンの住人であるという運命を断ち切れたのかどうかも、
実際のところはわからない。だが満や薫、それにせつなの存在はキリヤもまた
この世界のどこかで確かに生きていることを示している証拠のように思える。
キリヤもまた、彼女達のようにどこかで生きていてくれていると。
そして――生きていてさえくれれば、きっといつか、どこかで会える。

――そうだ、合宿のこと……
のぞみか誰かに聞いてみようとほのかはアドレス帳を取りに部屋に戻った。


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