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エピローグ

「分かったムプ!」
ムープがそのことに気づいたのは満たちが滅びの力を打ち倒して数日経った頃のことだった。
「どうしたププ?」
「プリズムフラワーっていうのはお花ムプ、ということはまた種から育てればいいムプ!」
フラッピにプリズムフラワーの種がほしいムプと言ってみるとフラッピは困った
顔をして、
「プリズムフラワーの種がどこにあるかは分からないラピ」
「そうムプ? フラッピでも分からないムプ?」
「分からないラピ……世界のどこかにはきっとあると思うラピ、でも場所は分からないラピ」
「ムプ……」
ムープはふわりと飛んでフラッピの耳の上に着陸した。
もういくつものアイディアを考え付いたのだがそのたびにうまくいかない。
「でも、それなら種を探せばいいチョピ?」
とチョッピが首を傾げる。
「どうすれば探せるププ?」
「ムプ……ムプッ!」
ムープが突然勢いを付けてフラッピの頭から飛び上る。
「それだったら、光のエネルギーの流れにお花の肥料も流せばいいムプ!」
「肥料ププ?」
「そうムプ! プリズムフラワーの種がどこかで芽を出したらきっと誰かが
 気が付いて育ててくれるムプ!」
「でもどんな肥料を流すチョピ?」
「どんな花でも喜ぶ肥料があるラピ!」
今度はフラッピも乗り気だった。
「フィーリア王女に頼んで、光のエネルギーの流れに混ぜて流してもらうラピ!」
精霊たちは行動を始めた。


それがうまくいったのか分からないが、プリズムフラワーの花は再び育った。そして
世界間の行き来が可能になった。

「満ー!」「薫ー!」
緑の郷に久しぶりに戻ってきたムープとフープは咲や舞と会った後、
満と薫を探しに夕凪町へと直行した。
満と薫はトネリコの森でのんびりしていたが、ムープとフープが突然
眼の前に現れたのに驚いたもののすぐにぎゅっと二人のことを抱きしめた。

「会いたかったムプ、満」
「私もよ、ムープ……」
薫はフープを抱きながら満とムープの再会を微笑んで見つめていた。


世界間の行き来ができるようになったのは、ラブ達とせつなにとっては別れを
意味していた。再び自分の元に戻ってきたアカルンを手に、せつなはいつもの
公園でラブと美希、祈里に別れを告げていた。

「せつな、お土産はちゃんと持った?」
「ええ、大丈夫。ドーナツをちゃんと持ったわ」
「せつなちゃん、体に気を付けてね」
「分かってるわ。ありがとう」
美希と祈里の気遣いにせつなはそう答えると、少し硬い表情のラブを見た。
「……ラブ」
「うん、せつな」
とラブは決心したように頑張って笑顔を浮かべると、「行ってらっしゃい」と
せつなに声をかける。

「大丈夫よ、ラブ」
せつなはラブに自然な笑みを見せた。
「今度はすぐに帰って来るわ」
「あ、でも無理しなくて……」
「大丈夫。週末には戻ってくるから」
ラブの後ろで「本当に早っ」と呟いた美希を祈里がひじでつついて黙らせる。
「じゃあ、行ってくるわね」
せつなはそう言うと、アカルンを使ってラビリンスへと戻っていった。


――あ〜あ、気が重いな……
故郷からこちらの世界へと戻ってきたブンビーは足取り重く自分の会社への道を進んでいた。
こちらに戻ってくることができたのは嬉しいが、会社が無事だとは思えない。
いきなり社長が失踪する会社なんて誰にも信用されないだろう。
もうブンビーカンパニーはつぶれてオフィスには次の会社が入っているかもしれない。
そんなところは見たくない。もうオフィスにはいかずにすぐに別の会社を始めることを
考えようか、とブンビーは思い始めた。

「おや?」
思わず声が出てしまう。出入り口のところには「ブンビーカンパニー」というパネルが
まだかかったままだ。オフィス内から声も聞こえる。
恐る恐るドアを開けてみると、
「あ、社長!」
とダークレモネードが気づいた。
「ダークレモネード君……というかみんな! いたのかい! 河合君まで!」
ダークドリームたち五人に加え、とっくに転職したであろうと思っていた
河合がいたのにブンビーは驚いたが、
「転職活動中に彼女たちに捕まって、社長代行をやれと言われましてね」
と答えると、
「あ、これ社長がするべき後片付けです」とブンビーの机の上にどさどさと
書類を積み上げる。
「は?」
思わずブンビーが河合の顔を見ると、
「突然社長がいなくなったもんですからね。緊急入院ということにしてごまかしましたが、
 迷惑をかけたところが多いので謝っておいてくださいね」
「あ……そうか、そうだよな、はは……」
「社長、退院してきたばかりということにするんですからあまり元気なところは
 見せないようにしてくださいね。あ、あと入院時のことを聞かれても答えられるように
 しておいてください」
ダークミントにそう言われ、「ああそうか」とブンビーは考えると、
「少し考えたいな」
と自分の椅子に座り、「誰かお茶頼む」と言ってみる。
「は〜い。お茶が入りましたよ〜……」
ダークドリームがにこにこしながら湯呑を盆に載せてきたが、数秒後に転んだ。


「こんにちは、お邪魔します。これ、お土産です」
「……」
キリヤはシロップに乗ってやって来たひかりとひかるを見て絶句していた。
お菓子を手土産に持ってきたその姿は、少し離れた友人宅に来ると
勘違いしてしまっているようにも見える。

「あの?」
黙っているキリヤに不安なものを感じたようなひかりの言葉に、
「……本当に来たんですね。その場の勢いで言っているのかと思いました」
「はい。あの、敬語は使わないでください」
「お姉ちゃん、これ何か面白そうだよ!」
ひかりの後ろに隠れていたひかるは装置に気づくとたったったと駆け出す。
「あ、ひかる!」
ひかるは装置に飛びつくとすぐにあちこちを触り始めた。キリヤは止めようと
思ったが、ひかるは装置の仕組みを分かったかのように動いているので
止めようとした手を留める。ひかりとキリヤはひかるの後について装置の近くへと
移動した。
「あ、これ」
とひかりは思い出したように封筒をキリヤに差し出した。
「ほのかさんからです」
「ほのかさんから?」
ぎくりとしながらキリヤはそれを受け取るが、
中を開けて読んでみるとベローネ学園サッカー部の人数が足りなくなってきたから
助っ人で今度の試合に参加してみたらどうかという話だった。
何だ、とキリヤは思う。もっと重い話かと思っていたから少し拍子抜けした。

「サッカーの試合なら半日で終わりますから。ちょっとだけ帰ってみても……」
「いや、でも、ここを空けては」
「大丈夫ですよ、きっと。滅びの力もすぐには戻ってこないでしょう。
 ほのかさんがおやつを用意して待っているって……」
だからその、少し離れた町の友達を待っているかのようなその状況は何なんだ。
キリヤはそう思ったが、少しして気づいた。彼女たちはもう完全に、
キリヤに「若葉台から少し離れたところにいる友達」という意識で接しようとしているのだ。

「……じゃあ、ちょっとだけなら」
このまま断り続けたらどんどん話がややこしくなっているのに決まっている。
そのうちほのか本人がここに乗り込んでくるかもしれない。
キリヤはそう思って少しだけ譲歩することにした。
「本当ですか? 良かった」
「サッカーに出るだけです。人数足りてるかもしれないし」
「ええ、そうですね。でも、ほのかさんはきっと喜ぶと思います」
キリヤはなんだか負けたような気がしたが、それはともかくとひかるが
何を始めたのか見守ってみることにした。


-完-

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