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「……何!?」
これまで余裕綽々だったゴーヤーンの声が突然焦りを帯びる。滅びの力を最大限に流して
いた装置が突然がしゃがしゃと変な音を立てたかと思うと、そこから逆流するように
ミラクルライトの光が飛び込んできた。
「まさか、光が!?」
バリヤーの中のキリヤにもそれは見えた。
装置から飛び込んだ光は一同を取り巻く滅びの力を弱らせ、バリヤーの中に届いて
一同に新たな力を与える。それは不思議な経験だった。ただ暖かい光を浴びているだけなのに
力が湧いてくるような気がした。

「あれ? 満ちゃんと薫ちゃん、服が……」
ダークフォールの戦闘服を着ていたはずの満と薫の姿が精霊の力を受けたそれに変わり
目の光も白を帯びているのを見てダークドリームは驚いたが、
ふと見てみると自分も戦闘服に……、いつもの黒い
それではなくキュアドリームに良く似た純白のものになっているのに気づいた。
ウエスターやサウラー、キリヤもそれぞれにプリキュアたちや各世界の生き物たちの
思いを受けた白っぽい服装に変わっていた。

「よし、これならいけるぜ!」
ウエスターが嬉しそうにどんと足を踏み鳴らす。
「おのれええ!」
つぶれかけていた液体金属が一か所に集まりくわっと竜のように首を上げると、
滅びの力のエネルギー波を六人めがけて打ち放つ。だが六人は避けずに踏みとどまって
大きく手を開いて受け止めると、
「はあああああ!」
と逆にエネルギー波を打ち返した。真ん中でぶつかりあったそれはしばらく拮抗していたが、
やがて光のエネルギー波がじりじりと液体金属に迫り、それを飲み込む。

「まだまだぁ……!」
ゴーヤーンの声はまだ聞こえた。滅びの力が一点に集中したかと思うと、
泥のように噴出してくる。
だが六人も攻撃の手を止めない。滅びの力にじりじりと押されながらも、
光のエネルギー波を放ち続ける。
「ぐああああああああ……!」
やがて、液体金属は断末魔の叫びを残して消滅した。

滅びの力が消えるとあたりは柔らかい乳白色の光に包まれた。これまで滅びの力を
流していた装置は、再び光のエネルギーを各世界の間に流し始めていた。
乳白色で何もかもがぼんやりとしか見えない世界。
その世界で、満と薫は咲と舞の声を聞いた。

「帰ろう、咲と舞のところへ」
「そうね」
二人は手を取り、声の方向へと歩んでいった。
雨がやみ雲が消えたトネリコの森では咲と舞がまだミラクルライトを振っていたが、
「ね、咲!」
と舞が空の一点を指さす。それは小さな黒い点のように初め見えたが、だんだん大きくなってきた。

「満! 薫!」
二人はミラクルライトをおろし、代わりに大きく手を振る。満と薫は咲と舞に気づいて
微笑むと、二人のそばへと急降下した。
「お帰りなさい」
「……ただいま」
咲と舞に照れたように二人は答えると、
「大丈夫だった?」
という舞の質問に
「ダークアクアたちのことはクリスタルの問題みたいだから
 まだどうなるか分からないけれど……」
と満は一瞬顔を曇らせたが、
「滅びの力は何とかなったわ」
と答える。よかった、と咲と舞は胸をなでおろした。

「それと、泉の郷でフラッピたちに会ったわ」
薫が続ける。
「本当!? 何か言ってた?」
咲が勢い込んで尋ねると、
「ムープが、何とかしてみんなが行き来できるような方法を考えるって」
と薫が答える。満はちょっと、と口を挟んだ。
「ムープ達に会ったなんて聞いてないけど」
「え? フィーリア王女に聞いた話を説明したじゃない」
「フィーリア王女に会ったとは聞いたけどムープ達に会ったなんて聞いてないわ!
 ずるい、薫ばっかり!」
「仕方ないじゃない」
まあまあと咲と舞は満と薫をなだめると、
「ムープ達が頑張ってくれてるならきっとまたすぐに会えるよ!」
「そうね、そんな気がする」
と口々に言い――四人は大空の樹の下に集まってからPANPAKAパンへと戻っていった。


ウエスターとサウラーの二人には、せつな達の声とラビリンスの住人達の声が
聞こえていた。
一瞬迷ったが、二人はラビリンスに帰ることを選んだ。今のラビリンスを放っておく
わけにはいかない。
「なあ、ウエスター」
乳白色の空間を歩きながらサウラーが話しかける。
「なんだ?」
「世界が滅びずにすんだのは良かったが、ラビリンスの問題は人が世界の間を
 行き来できるようになるまで終わらないんだ」
今はプリズムフラワーが消えた時に本来なるべき状況――光のエネルギーが各世界を
流れてはいるが人は移動できない状態である。
「細かいこと言うなよ」
そんなサウラーにウエスターは上機嫌に笑って見せた。
「ホホエミーナを預けてきたところで妖精たちが言ってたじゃないか。
 人が行き来できるように方法を考えるって。すぐ何とかなるぜ」
「……そうか。そうだな」
確かな根拠があるわけではないが、サウラーはそう感じた。
――それに、そうなれば……
昔のラビリンス、良い国だと言われていた時代のラビリンスを知るおもちゃ達が
帰って来てくれる。
そうなるとラビリンスの目指すべき道も見えやすいだろうとサウラーは思った。


ダークドリームはのぞみの声を聞きながら歩いていた。真っ直ぐに。真っ直ぐに。
のぞみとその仲間の声は聞こえたが、自分の仲間たちの声は聞こえなかった。
「ダークドリーム!」
青空を見ていたのぞみがダークドリームに気づく。ダークドリームは地面に降りると、
「のぞみ!」
と駆け寄ってきた。
「ダークドリーム! 無事だったんだね!」
二人は安心したように抱き合った後、つと離れる。
「ね、ねえ。他の……みんなは?」
恐る恐るかれんが尋ねると、ダークドリームは「みんなは……」とうなだれて
自分の胸のクリスタルを押さえた。いつのまにか戦闘服は黒色に戻っている。
「この中に」
というダークドリームの言葉にのぞみ達一同が不思議そうな表情を浮かべる。

と、
「熱っ」
とダークドリームが思わずクリスタルから手を離すと、突然胸の中から
ダークルージュたち四人が飛び出してきた。
飛び出してきた四人にダークドリームは押しつぶされる。
「あ、あんた達どこから!?」
思わずりんが叫ぶ。彼女たちには、ダークルージュたち四人がどこからともなく
突然現れたように見えた。
「それは後! まず重いからどきなさいよ!」
ダークドリームのすぐ上で他三人の下敷きになっているダークルージュが
悲鳴のように叫び、上から順番にダークプリキュア5はなんとか立ち上がった。
「みんな!」
とようやく立ってきたダークドリームが嬉しさを全開にして他の四人の首に
かじりつくようにして飛び跳ねる。
「……ダークアクア」
とかれんもほっとしたような表情を浮かべ、
「何があったの?」
と聞いてみる。
よく分からない、というのがダークルージュたち四人の答えだった。
冷たいところにいたと思ったら暖かいところに移り、それで気づいたら
ここにこうして出てきていたと。ダークドリームにとってはそんなことはどうでもよく、
こうやってみんなが出てきてくれたことが嬉しかった。

「あ……」
ミギリンとヒダリンはクリスタルに起きていた異変に気付いた。赤、黄、緑、青の
4つのクリスタルは光のエネルギーの流れに乗せて、どこか別世界に自らのクリスタルの
エネルギーを流している。ひょっとして、と二人は顔を見合わせた。
「クリスタルがダークルージュさんたちのことも認めたのかもしれないね」
「うん、僕もそんな気がする」
ミギリンとヒダリンは良かったと息をついた。クリスタルの意志は自分たちが
働きかけたからといって変わるものではないが、ダークドリームの様子を見ると
同情しないではいられなかったのだ。これで肩の荷が降りたような気がした。
「ダークドリームさん、クリスタル返すの忘れていないかなあ」
空のままのピンクのクリスタルの台座を見てミギリンが呟く。
「来れるようになったらすぐ来てくれるといいんだけどね」
とヒダリンも言葉を返した。


キリヤにはほのかの声が聞こえていた。だが彼はこの場に留まることを選んだ。
乳白色の光は次第に薄れ、キリヤが見慣れた調節場所の光景が戻ってくる。
彼が力を入れてつくった調整装置は滅びの力の影響でだいぶ壊れているように
みえたが、
――まあ何とか直るだろう。
と、点検してみてキリヤは思った。そして光の欠片がいつの間にかこの場所に
戻ってきていることに気が付いた。

――ほのかさん……

行き来ができるようになってみたら一度虹の園に戻ってみるべきか。でも……とキリヤは
思いながら、とにかくシステムの安定化を急ごうと気持ちを切り替えた。


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