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「私ね、キュアドリームのニセモノなんだよ。今はのぞみの友達だけど」
目を丸くしているチョコラにそう説明して――チョコラは目を丸くした
ままだった――、続ける。
「のぞみみたいにみんなと一緒に頑張っていきたいって思ってたんだけど……、
 でも、みんないなくなっちゃった。私やっぱり、のぞみみたいにはなれないや……」
「ダークドリーム……」
何と声をかけたものか満が悩んでいる横をチョコラが小走りに駆け抜けると、
ダークドリームの手をぎゅっと握った。
「ん?」
「キュアドリームの手は震えてましたわ。私たちを助けてくれた時。怖いって……」
「のぞみが? どうして?」
「他のプリキュアのみなさんや、ココ様たちとはぐれて一人になってしまっていたので……」
「のぞみも?」
「でも、『みんなのためなら頑張れる』って言ってましたわ」
「みんなのため?」
「ええ」
――そういえば、私と戦っていた時も『大好きなみんなのためなら』って言ってたっけ……

あの時、ダークドリームは「大好きな人」というのがよく分からなかった。
ダークドリームは思わず胸のクリスタルを押さえた。クリスタルには今は
ピンクのクリスタル本体が入っているため触ると少しだけ暖かいのだが、
更にダークルージュの炎の熱さを感じたような気がした。

満はそんな会話を横に聞きながら邪魔をしないように黙っていたが、
何かを感じたように窓の隅に目をやる。メロンパンはもう食べ終わっていた。
「……来た!」
突然そう叫ぶと、満は窓を開けて外へと飛び出した。
「あ、待ってよ満ちゃーん!」
ダークドリームも満を追いかけるように外に出る。
「え? え?」
突然のことにチョコラは何が起きたのか理解できないでいたが、
「チョコラ様、大変です!」と部屋の外から声がかかる。
「どうしたんですの!?」
「煎餅の林に突然大量の水がまき散らされました! みんな湿気てしまっています!」
「ええ!? 何てひどい!」
思わず部屋の外に出ようとしたチョコラだったが、
「お待ちください! 邪悪な力が働いているようです。危険です!」と
慌てた部下に止められる。
――邪悪な力……さっきの二人はそれと戦いに?
チョコラは視線を巡らせた。


樹になった煎餅の一枚を水の矢で射ち落すと、ダークアクアの姿をした
ミズ・シタターレは満足げにうなずいた。水は周りにも飛び散り、
辺りの煎餅を濡らしている。

「ああら、満。お出ましね」
満が林の中に急降下してきたのを見て彼女は皮肉げに笑みを浮かべた。
「ミズ・シタターレ……!」
くくっと右手の甲で口を隠してシタターレは笑う。
「どんな姿をしていても、私の魅力は隠しきれないようねえ」
「……水使ってればあなたのことなんて誰でも分かるわよ。魅力って言うなら
 その姿の方があるんじゃない?」
満が冷たくそう言い返すと「そんなわけないでしょ!」とミズ・シタターレは言い返す。
「本当にもう、こんな小娘の姿になるなんて不本意だわ」
満の後ろにとんと降り立ったダークドリームはその言葉を聞いてむっとして
「だったらダークアクアを返してよ!」
と叫ぶ。
「ダークアクア? へえ、そんな名前なの。フェアリーパークで私の邪魔を
 してくれた小生意気なプリキュアに少し似ているようだけど、
 ニセモノか何かかしら?」
「くっ……」
ダークドリームはミズ・シタターレの挑発に奥歯をかみしめた。
「へえ、否定しないの。じゃあそういうことかしらね」
「いい加減に……!」
業を煮やした満が大地を蹴るとミズ・シタターレに拳を放つ。
ぱっと身を翻してミズ・シタターレはそれを避けると、
「ウザイナー、いらっしゃ〜い!」
と大地に向けて滅びの力を放つ。
「ウザイナーッ!」
と地下水脈がムカデのように立ち上がった。
「ウザイナー!? どうして!?」
満はぴゅんと空中に飛び上りウザイナーの吐き出す粘液を避ける。
「あら満。気づいてないの? この世界の根幹を滅びの力が侵食し始めてるってこと。
 この状態で私の力があったらウザイナーを出すことだってできるわ。
 ウザイナー! そっちをやりなさい!」
ダークアクアの姿をしたミズ・シタターレがダークドリームを指さしたのを
見てウザイナーがいくつもの足を動かしダークドリームに向けて進撃する。
――うわなんか気持ち悪い……
ダークドリームはその姿に気おされながらムカデの放つ粘液を避け、
ぽんぽんと軽く飛び回ってウザイナーの背後に回る。
「ウザイナー!」
突然今迄からは考えられないような素早さでウザイナーが振り返った。
「!?」

「だったらミズ・シタターレ! ダークアクアの姿なんて借りないで
 自分の姿になりなさいよ!」
「そうできるもんならとっくにそうしてるわ!」
ちょこまかと動く満に苛々しながらダークアクアの姿をしたミズ・シタターレは
手に握った大剣を振るい満にまともな攻撃をさせない。
「私の姿を取り戻すためにはもっと滅びの力が必要なのよ!」
「わあっ!?」
突然ダークドリームの叫び声が聞こえて満は思わずそちらを振り返った。
チャンスとばかりにシタターレが大剣を満に突き刺す。
「ぐううっ……!」
シタターレはぱちりと指を鳴らして地面に崩れ落ちた満に氷の輪をはめて拘束すると、
ダークドリームの方に向き直った。
ダークドリームはムカデウザイナーの発した粘液に捕らえられ――粘液が彼女の
首から下を完全に包み込んで動けなくなっていた――地面に棒立ちになっていた。
そんな姿を見てシタターレはにやりと笑うと、
「これでやっと落ち着いて話ができそうね」
と呟く。
「話? 話って……?」
「入澤キリヤはどこにいるのかしら?」
え? とダークドリームは不思議そうな表情を浮かべた。
「誰? それ?」
へ? と今度はミズ・シタターレが意外そうな声をあげる。
「何よあんた。知らないの?」
こくりとダークドリームが頷くと、
「なあんだ。使えないわねえ」
とミズ・シタターレは驚いた。
――だったらここで始末しちゃったほうが後々面倒がないかしらね……
そう考え始めると、
「知ってたって言わないわ……」
と満が倒れたままに喘ぐ。
「えーっ! 満ちゃん知ってるの!?」
とダークドリームが素っ頓狂な声をあげたのを横目にミズ・シタターレは
満のところへと歩み寄ると縛られたままの満の服の胸のあたりを掴んで
ぐいと持ち上げた。
「ふふ、満。やっぱり使える子ね」
苦しい姿勢のまま満は目を開けてはあはあと荒い息をつきながらミズ・シタターレを
睨み付ける。
満は入澤キリヤの居所を知らなかった。それどころか、彼の名前をぼんやりと
覚えていただけだった。
だが、とにかく知っている振りでもしなければここで二人とも躊躇なく
倒されてしまうと――フラッピたちが以前使っていた手を使った。
ミズ・シタターレは満のその策略には気づかず上機嫌で、
「前にできなかった分も合わせて、たっぷり可愛がってあげるわ。満」
満を掴んでいない左手を動かしたかと思うと、ごうっという音とともに地が割れ
満とミズ・シタターレ、ダークドリームにウザイナーは地下水脈の中に吸い込まれていった。


「チョコラ姫様! 邪悪な力が消えました!」
チョコラは城から戦闘の様子を眉を顰めてみていたが、部下からその報告を受けて
「二人はどうなったんですの!?」
と尋ねる。チョコラのいる場所からは二人も一緒に消えたように見えたが、
もしかするとここからは見えない場所に二人がいるのではないかという期待もあった。
「……戦っていた二人も消えました」
「……」
チョコラは肩を落とした。

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