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「うああああああ……!」
カレハーンとの戦いの後ダークフォールに似た世界から吹き飛ばされた薫は
どこの世界にも属さない空間……世界と世界の狭間の空間をさまよっていた。
少し落ち着いて体勢を立て直すも、どこかへと流されていくのは変わらない。

――これってもしかしてダークアクアの言ってた……
と、薫はふと思い出す。ダークアクアが鏡の国に入国を拒絶されて弾き出された時、
ものすごい勢いで流れている何かの中に放り出されたと言っていた。
しかし今、薫の周りで流れているのは――世界の狭間を満たしているのは、
滅びの力である。
ダークアクアが言っていたのは滅びの力に満たされた場所ではなかっただろう。
似ているけど違うのかもしれない、と薫は思う。
――それより、これどうにかしないと……
川で流されているなら岩なり水底なり、掴まるものがでてくるかもしれない。
だがこの状況ではいつまでも掴まれるものが出てきそうにない。
とにかく、と薫は体勢を立て直した。
身体に力を籠める。滅びの力が充満していく。と、流れの中でも自由に体を動かせるように
なってきた。

「おいっ! あそこに誰かいるぞ!」
「いくぞホホエミーナ!」
誰かの声がした。誰? と薫は思うが、とにかくその声の方向に身体を動かそうと流れに
逆らってみる。

「おい、お前! 聞こえるか!」
「あれ、あれは……」
声が先ほどより近くから聞こえてきた。薫はそちらの方向に手を伸ばす。黒い
大きな影が見えた。敵か味方かも分からないが、とにかくそれにしがみつこうと
腕を伸ばすと、巨大な影の上にいた人の手が伸びてきて薫を上に引っ張りあげる。
「あ、あなたたちは……」
ひっぱりあげられて薫は巨大な動物の背に乗った。薫を引っ張ってくれたのは
体格のいい若い男だが、もう一人細身の男が乗っている。薫はこの二人に見覚えがあった。
フェアリーパークで見たことがある。確かこの間のショッピングモールにも
いたような気がする。
「ん? どこかで会ったか?」
と体格のいい方の男は覚えていないようだったが、もう一人の方がやれやれと肩をすくめる。
「覚えてないのかいウエスター。フェアリーパークで会ったじゃないか。それに
 ショッピングモールでも」
「え、あ……そうだったか」
「こんな風にちゃんと話すのは初めてだな」
と細身の男――サウラーは薫に正面から向き合う。
「僕はサウラーで、こっちはウエスター。ラビリンスの住人だ」
「ラビリンス……せつなの故郷……?」
「ああ、君は彼女のことを知ってるんだったね。彼女と同じところの出身なんだ。
 まあ、プリキュアとはいろいろあったんだが結局は彼女たちに助けられて
 今はラビリンスの復興を目指してる。それで君は? どういう存在なんだい?
 確かいつもは赤い髪の子と一緒にいたような気がするけど」
「私は……霧生薫。もともとはダークフォールの戦士。
 でも、プリキュアに大切なものを教えてもらったわ。だから、今はそれを守る」
ダークフォールと聞いてサウラーの顔が緊張した。
ウエスターが「ダークフォールってなんだよ」と横から聞いて来てうるさいので
「滅びの国だよ」とだけ答えて黙らせる。

「……君は何か知っているのかい? この現象について」
「現象?」
「パラレルワールド間での行き来ができなくなった。そして、どうも各世界の間に
 滅びの力が満ちているらしい。君は何か知っているのかい?」
「行き来ができなくなったのはプリズムフラワーの力がなくなったからだと聞いているけど」
薫は咲と舞から聞いたプリズムフラワーの説明を簡単にした。初めて聞く話だったらしく、
ウエスターもサウラーもふんふんと聞いている。
「滅びの力のことは……よく分からないわ。ただ私は、滅びの力がどういうわけか
 勢いを増しているようだったから調べようと思っただけ……」
「そうか。こんな風に滅びの力が強くなっている原因は君にも分からないんだな」
サウラーは残念そうにそうつぶやく。
「ええ。……あなた達はどうやってここに?」
「僕たちは……」
とサウラーはマントを直した。彼らの戦闘服はプリキュアと戦う時に着ていたそれと同じで
黒色がベースになっている。
「ラビリンスは他の世界と連絡がつかないとやっていけないのでね……、何とか
 外に出るための方法を探していたんだ。そうしたら国の地下深くに滅びの力がわずかにだが
 保管されていてね」
ぎょっとして薫は思わずサウラーを睨み付けた。
「……ラビリンスの昔の政策で滅びの力を利用できないかとしていたらしいんだ」
サウラーはため息をつきながら、
「その力がいきなり暴走を始めて、止めにいった我々は滅びの力を浴びてね。
 ホホエミーナも真っ黒になってしまった、ほら」
「ホホエミーナ!?」
サウラーが自分たちの下を指さしたのを見て、薫は驚いて自分が今座っている動物の
背中を見た。ホホエミーナのことなら以前ラブたちから聞いたことがある。
確か真っ白だと聞いていた。
薫はそのまま這って、動物の頭部分に乗りその顔を上から覗き込んでみる。
キュンキュンと悲しそうな声で泣いていた。

「……泣いてるけど」
「あまり状態は良くないんだと思う。……だが、滅びの力を浴びたことで
 ラビリンスの外に出られるようになったのも事実でね……、君がこの空間に出てきた
 ことを見ても、滅びの力を持っている者ならパラレルワールド間を移動できるのかもしれない」
「でも、このままじゃ」
薫が心配そうにそう答えると、

「ああ、だから早くどっかの世界にたどり着きたいんだ。薫って言ったか?
 どういけばいいのか知らないか?」
ウエスターが大声を出す。
「……分からないわ、私にも」
「そうか。困ったな……」
ラビリンスの外の様子を見ようと思って出てきたものの、サウラー達にも
特に行く当てがあったわけではない。ただ、外に出てみたら思いのほか
流れが強くラビリンスからどんどん離されてしまったので戻るにも戻れなくなってしまっている。

――困ったな……
三人は同時にそう考えた。このままではどうしたらいいのか分からない。三人が
ホホエミーナの背中の上で顔を見合わせて途方に暮れた時、
「薫! こちらに来てください!」
と声が聞こえた。え、と薫が思うと、身体がぐらりと揺れて落ちそうになる。
「薫!」
「君!」
ウエスターとサウラーが思わず手を伸ばした。薫は二人の両手を掴むが、
「ええええ!?」
「ちょっとおい、何だこれ!?」
サウラー、ウエスター、それにホホエミーナもろとも薫は転落した。

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