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「満、私諦めたくない。咲や舞が変えてくれた運命を大切にしたい。
 満のことも、咲や舞やみのりちゃんのことも、緑の郷のことも守りたい。
 ……満は?」
薫の目が満の目を覗き込んだ。
――ああ、そうか……
満は漠然と思った。
――昔に戻ったりしたら、こんな風に薫や咲や舞と話すこともできないんだっけ……

「薫、ゴメン。ちょっと気が弱くなってたみたい……私も諦めたくないわ」
「そう」
満と薫の握った手に力が篭る。

「満、こういう時はいつものアレね。二人だけだとちょっと恥ずかしいけど」
「そうね、恥ずかしいけど……私たちは、絶対、」
「諦めない!」
満と薫の声がユニゾンした。二人のいる闇の中に光が生れる。
闇のドームを破り二人は再び外に出た。

「お前たち……!?」
「行くわよ、薫!」
満はもう怪物の声を相手にしていなかった。

「ええ、満!」
どんな攻撃であれ怪物に吸収されてしまうのであれば使えない。
だが満と薫には一つだけ奥の手があった。咲も舞も、この技のことは知らない。
――私たちはプリキュアじゃない! 
満は思った。
――だから、私たちのやり方で大事なものを守ってみせる!

満の右腕、薫の左腕に暗黒の力が宿る。
二人が一度も使ったことのない滅びの力――泉の郷を滅ぼすためにダークフォールの住人が
使っていた力だ。

突き出した二人の腕から放たれた暗黒の力は左右から怪物に向う。
「ぐわあああッ!?」
吸収しきれず、逆に吸い込まれて行く怪物の断末魔の悲鳴に
緑の郷の木々や草までもが恐れたように息を止める。

――小さく、小さく、大きくし過ぎないように……
この力がある程度以上まで大きくなれば二人にも制御しきれなくなってしまう。
そうなれば結局緑の郷を滅ぼしてしまうだけだ。

滅びの力を操る腕に力が篭る。
「薫、今よ! 引いてっ!」
「ええ!」
滅びの力は一度放たれれば拡大し続ける性質を持っている。
ある程度のところで成長を止めさせるためにはどこかに押し込めなければならない。
滅びの力を収めておくための器が必要だ。

器として、満は自分の右腕を、薫は自分の左腕を差し出した。
滅びの力が怪物を吸い込んだ状態で逆流してくる。
「うあああああっ!」
思わず声が漏れる。腕が燃え上がりそうに熱い。
満と薫は思わず互いの手を強く握り締めた。




「 エクストリームルミナリオ!!」
「プリキュア・スパイラルスター・スプラッシュ!!」
「ミルキィローズ・メタルブリザード!!」
「プリキュア・レインボーローズ・エクスプロージョン!!」
「プリキュア・トリプルフレッシュ!! 」
その頃、横浜みなとみらい。プリキュアたちの必殺技が炸裂し、フュージョンは消滅した。

「やった……の?」
ブライトの声に、他のプリキュアたちもやや緊張をほぐす。
「そう……みたいです」
レモネードの言葉に一瞬みんな笑いかけたが、
「まだ終ってないムプー!」
ムープの声で再び緊張が走った。だがそれに続く言葉はプリキュアたちにとって
予想外なものだった。

「満と薫がどうなったか分からないムプ!」
「ええ!?」
みちる? かおる? と他のプリキュアたちが首を傾げている中、ブライトとウィンディが
驚いてムープに詰め寄った。
「分からないって、どういうことよ!?」
「満と薫は、フープたちみんなを助けに来てくれたププ、でもその後
 どうなったか分からないププ!」
「あの時の二人組の戦士のことラピ」
フラッピがココやメップル、タルトたちに説明している。
「ええ!? 何で早く言わないのよ!?」
「言う暇なかったムプ……」

「その人たちもプリキュアなの?」
ブライトがムープに怒らんばかりの勢いで話している横でピーチはタルトに尋ねていた。
「うーん、なんか不思議な二人組やったな、プリキュアのようでプリキュアでないっちゅうか、
 そっち方面の」
「?」
却って分からなくなったとピーチは言いたそうだ。

「あなたたちはその二人のこと知ってるの?」
ホワイトの疑問にウィンディは
「二人は私たちの……私と咲の、大事な友達です!」と答え、
「とにかく行きましょう、ブライト!」と促す。
「うん!」と飛び立とうとした二人に、
「待って! 私たちも行く! 友達が困ってるんでしょ?」
とドリームが声をかけた。「みんなも行こう!」と仲間達を振り返るとルージュやローズたち
5人が「Yes!」と返す。

「わ、私たちもいきまーす!」
ピーチも手を挙げ、ブラックとホワイト、ルミナスもブライトとウィンディに頷きかける。
「みんな、……ありがとう!」ブライトがそう答えると、シロップが巨大化した。

「飛べない人は乗せてくロプ!」
「よっし!」「シロップ、全速力よ!」
ブラックとローズが真っ先に飛び乗り、
「お邪魔します」と最後にルミナスが乗る。
「じゃあ、二人と最後に別れたところに案内して!」
ムープとフープが飛び立ち、シロップとブライト、ウィンディがその後を追う。


「う……」
怪物を飲み込み、満と薫はどさりと倒れた。腕が熱い。肩から棒がぶら下がっているかのように
動かせない。

くちゃり、と嫌な音がして満ははっと目を向けた。わずかに残った怪物のかけらが
地面の上でのたくっている。

――あと少し……あれくらいなら、すぐ倒せるのに……
満も薫もそう思ったが、身体がいうことを聞かない。
――今、倒さないと、今のうちに……また何かの力を吸収したりしたら……

逃がすわけには行かない。ここで倒さなければ。絶対に。
――どうにかしないと……誰か……、

「満!」「薫さん!」
――咲、舞!?
満と薫が薄目を開いた。咲と舞がこちらに降りてくる。
――やっぱり来てくれた……。
ほっと安心して満は再び目を閉じる。咲たちが来たならもう大丈夫だ。
根拠もなくそう思えた。

「サファイアアロー!」
上から降ってきた声と共に、水の矢がわずかに残った怪物の体を貫く。怪物はそのまま消滅していった。

「満、薫!」「大丈夫!?」
ブライトとウィンディが大空の樹の前に急降下し二人に駆け寄る。
「だ、大丈夫よ……手間取っちゃったけど」
満は何とか立ち上がろうとしたが、できなかった。
シロップが着陸する。見たことのないプリキュアたちを見ても満と薫には驚くゆとりがなかった。

「みんな、レインボーミラクルライトココ!」
精霊たちがミラクルライトをかざす。何をしているのかと満と薫は思ったが、
「うん……?」
身体が癒されていくのを感じた。動かなかった腕が意志を取り戻していく。
「満、薫、ありがとうムプ!」「ありがとうププ!」
立ち上がった二人の胸にムープとフープが飛び込んでいった。

「満と薫、だよね? メップルたち助けてくれてありがとう」
シロップからブラックが降りてくる。
「ココたちのことも、ありがとう!」「タルトのことも!」
ドリームとラブも降りてきた。
「え、えーと、あなたたちは?」
薫が戸惑う――と、ブライトが後ろから寄ってきて、
「みんなプリキュアなんだよ。満と薫のこと気にして、来てくれたんだ」と説明する。
「そうだったの……プリキュアって沢山いるのね」「あ、ありがとう」
「お互い様よ」と、ミントが笑う――「これで本当に、全部終りかしら?」
見上げた空には一点の曇りもない。終ったらしかった。

16人のプリキュアたちの姿が、中学生の少女達のそれに戻っていく。

「あ、あの! 私たち、これからダンスコンテストに出るんです! 
 よかったらみなさんも見ていってください!」
ラブの言葉に、みんながああそうかと思い出す。

「うんうん! それって、どこでやるの?」
のぞみがにこにこしながら尋ねた。
「みなとみらいです! 一時間……え〜と、一時間半後から!」
「みなと……みらい?」
りんの表情が固まった。みなとみらいは海の向こう。
プリキュアではない少女達の場合行くのにかかる時間は……。

はあ、と美希がため息をついた。
「ラブ、もしかすると遅刻かも」
「えーっ!?」
「だ、大丈夫だよ、きっと遅れないって私、信じてる!」

「夕凪町からなら電車に乗っていけばなんとか時間までに着くはずよ」
てんやわんやになっている三人をほのかが落ち着かせると、
「あ、でも今の時間電車の本数少ないよ! とにかく早く駅に行かないと!」
咲が大慌てで叫ぶ。
「とにかく行こう!」と咲が先頭に立って走り始める。咲は満の手を握っていた。
舞は薫の。そうして、16人は一塊になって走っていた。
駅に着き、どうにか全員が同じ電車に乗ることができたのは奇跡だったかも知れない。

電車はちょうどすいている時間帯で、貸切みたいにその車両には
他のお客さんがいなかった。ほのかや舞、のぞみといった運動の苦手な
少女達は席に座ってはあはあと肩で息をしている。

そんな中、なぎさが手を叩いた。
「はいは〜い、みんな! 終点までこれ乗ってくなら、
 着くまでの間みんな自己紹介しようよ! まずは私からね!
 美墨なぎさ、ベローネ学院中等部の三年生で……」
女子校の教室のようになってしまっていった電車が夕凪町を後にする。

-完-

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