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「満、薫、本当に行かないの?」
咲は残念そうな表情を浮かべる。
「フィーリア王女が私達に話があるってことだもの」
「すっぽかすわけにはいかないわ」
PANPAKAパンの前で咲と舞、満と薫は2対2に別れて話し合っていた。

事の発端は先週、仁美と優子がナッツハウスというところでアクセサリーを買ってきたことである。
教室でみんなにも少し見せたが、部活の後の更衣室で咲に詳しく話してくれた。
「こんな感じのアクセサリーが一杯あって、マジおしゃれだったよ!
 店員さんもマジ格好よくて……」
「へえ……」
咲は仁美の手からブレスレットを受け取るとしげしげと眺めた。
「咲、興味あるんだったら行ってみたら? はいこれ」
優子が持っていたのはナッツハウスのチラシだ。

「後ね、何か可愛いマスコットもいたよ」
「マスコット?」
「そうそう」
仁美は咲から返されたブレスレットをしまうと、両腕で何かを抱きかかえるような
格好をした。
「わたし達が言ったときは白くて耳の長いマスコットがいたんだけど、このくらいで
 ふかふかしてて、マジ可愛かったんだ〜」
「へえ、それ見てみたい」
「でもね、すごく不思議なお店でマスコットがいるときといないときがあるんだって。
 店の外にいた、カメラを持っている女の子に聞いたんだけど」
優子の言葉に咲は首を傾げる。

「日によって違うの?」
「マジそうらしいよ。わたし達は見れて運がよかったみたい。咲、行ってみたらいいんじゃない?
 美翔さんにも霧生さんたちにも似合うアクセサリーありそう。3人とも綺麗だし」
制服に着替え終わった仁美がスポーツバッグを肩に引っ掛けた。

「うん、そうだね……って、私は!? 私に似合うのもあるでしょ!?」
「あはは、咲、お先に〜」
仁美は手を振って先に帰ってしまった。

そんなことがあって、今日の日曜日は舞、満、薫と一緒にナッツハウスに行く予定に
なっていたのだ。
それなのに昨日突然、ムープとフープがこちらにやって来て
「明日フィーリア王女が満と薫に泉の郷に来て欲しいって行ってるムプ」「そうププ」
ということで、満と薫は今日は行けないことになってしまった。

「私たちは行かなくてもいいのかしら。ナッツハウスに行くのは来週でも……」
その言葉に咲は傍らの舞を振り返る。
「うん、そうだよね……」
「フィーリア王女に何か考えがあるのかもしれないわ。それに舞。
 来週の日曜にはお家の用事があるかもしれないんでしょ?」
薫は二人に取り合わない。咲と舞はまだ納得していないような様子だったが、
「……だったら咲、舞。今日いって、私たちに似合いそうなのがあるかどうか
 探しておいてくれる? 今度行った時に見たいから」
満の言葉を聞き咲は腕組みをしたがやがてうんと頷く。

「じゃあ、絶対二人に似合うの探してくるから」
「ええ、お願いね」
咲と舞は立ち去りがたくしていたが、満に
「ほら、結構遠いんだから。早く行かないといいのがなくなっちゃうかもしれないわよ」
と促されてようやく立ち去る。

咲と舞の背中が見えなくなってから満と薫はくるりと後ろを向き、
こちらは大空の樹に向った。
ムープとフープは一足先に泉の郷に戻っている。
大空の樹の前に満と薫が立てば自然と泉の郷に招かれるはずだと説明はされていた。

「薫。今日は何の用事だと思う?」
「さあ……」
トネリコの森は涼しい風を二人に送っている。満の問いに薫も首をかしげた。

「ムープたちはあまり深刻そうな様子もなかったけど」
「今日は友達に会えるって言ってたわね。何か、色々なところから来るとか……」
自分たちが何故今日呼ばれたのかはいまいち判然としない。
結論の出ないまま二人は大空の樹の前に着いた。

「さて……」
ムープたちに言われたとおり、樹の前に近づく。
――ペッタンコするくらいの距離まで行かないと駄目かしら……
満がそう思い始めた直後、大空の樹が温かく光り始めた。

一瞬の後にはもう泉の郷である。
普段行く空の泉ではなく、世界樹の前だったが。
"満、薫。良く来てくれましたね"
フィーリア王女の声がする。世界樹の中からだ。
「フィーリア王女」
二人は世界中に向けて軽くお辞儀をする。
「今日はどのようなことでしょうか」
薫の問いに対する答えはしばらくして返ってきた。
"泉の郷を守ってほしいのです"
また何か危険なことが起きそうなのかと二人の身体に緊張が走る。

"フラッピ、チョッピ、ムープ、フープたちは会議に出かけています"
会議? と二人は思ったが王女の話は続く。

"たいへん危険な気配がこの世界に近づきつつあるので、その対策のためです。
 ……そして今、フラッピたちがいないために泉の郷には大変力の弱い精霊達しか
 残っていないのです。彼らに身を守ることはできません。……ですから、満、薫。
 フラッピたちが会議から戻ってくるまでの間、ここにいて欲しいのです"
「分かりました」
"ありがとうございます"
満が答えると、フィーリア王女の声はそのまま聞こえなくなった。
満と薫は顔を見合わせ、世界樹を背にしてその場に座る。

危ない気配が近づいてきているとはいっても今は穏やかなものだ。
世界樹の下にいると、まるですべての生き物の命が感じられるような気がする。
空の泉の精霊が一体、薫に近づいてきた。
掌を差し出すとその上にちょこんと止まる。左手の指で軽く頭を撫でると、
嬉しそうな声を上げて答えた。

「薫」
私にも、というように満が自分の手を薫の掌に近づける。
空の泉の精霊は満の手には乗らずに頭の上にちょこんと乗り、しばらく赤い髪の毛を
いじっていたがやがて飛んでいってしまった。
片手で軽く髪の毛を直している満を見て薫は苦笑した。

「まだ咲たちは着かないかしらね」
「そうね、結構遠い場所だったから……ねえ、薫?」
満は座ったまま横目で薫を見る。
「アクセサリーって、何か思い出さない?」
「え? ……」
突然の質問に薫は戸惑う。
「……何のこと?」
「忘れてるの? 昔、私たち咲と舞が持ってたアクセサリーを隠したこと
 あったじゃない」
「ああ……」
忘れていたわけではない。だが、敢えて思い出したいことでもない。
薫は眉をわずかに顰めた。

「あの頃は、プリキュアがなんであんなもの一つであんなに動揺するのかと
 思ってたけど……今思うと、」
ひどいことをしたものね。満は体育座りになった膝に顔を埋めるようにしてそう呟く。

「そうね。私たちはその分も……」
"満、薫っ!"
フィーリア王女の声で薫の言葉は破られた。二人は反射的に立ち上がる。
"現れました、パルミエ王国です! すぐに精霊達を助けに行ってください!"
「はい!」
と同時に答えると、
"今、送ります!"
王女の声は妙に遠くから聞こえた。二人の身体が浮き上がったかと思うとどこかへと向って
猛スピードで運ばれていく。最後には投げ出される形で二人の身体は止まった。
「ここ、どこ?」
「分からないわ、でもあの建物から変な気配がする。いくわよ、満!」
二人は瞬時に灰色の戦闘服へと変身すると会議場に駆け込んだ。
通路でピンク色の小さな生き物とすれ違う。

――ここは、何!? 泉の郷でも緑の郷でもない別の世界!?
阿鼻叫喚の会議室に飛び込む。
「……!」
触手に捉えられそうになっていた茶色いリスのような生き物を満が抱えて横飛びに飛んだ。
灰色の奇妙な存在――これが妖しげな気配の正体だ――と、小さな生き物達があちらこちらに見える。
ムープとフープ、フラッピとチョッピの姿もそこにあった。

「ムプーッ!?」
ムープに迫る触手を薫が蹴り飛ばす。「満!」
満と薫は近づくとそれぞれの片手でバリヤーを張った。小動物たちと謎の存在が
バリヤーによって遮られる。
満は茶色いリスを床の上に降ろした。両腕できちんと張らないとバリヤーが持ちそうにない。

「き、君達、誰ナツ?」
「いいから早く逃げなさい! フラッピとチョッピは咲たちのところに行きなさい!」
小動物たちは一瞬戸惑っていたが、「みんな、いくラピ! 満、薫、後は頼むラピ!」
というフラッピの声で一斉に出口に向って駆け出す。

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