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「メップルー!」「ミップルー!」「ポルン、ルルンー」
なぎさとほのか、ひかりの声が森に響く。
フェアリーパークが復活したノーザたちによって不気味な空間へと変えられてから
どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。

なぎさ達三人はメップル達パートナーの姿を求めて園内を歩き回っていた。
ひっそりと静まり返った園内だが、たまに爆音のような音が聞こえてくる。
既に変身したキュアピーチたちやキュアドリームたちが戦っているのだろうか……、
いやもっとまずいことになっている可能性もある。
なぎさ達と同じように変身できないでいる咲や舞、つぼみやえりかが
敵に遭遇してしまったのかもしれない。その可能性を考えると、
なぎさ達の焦燥は強くなった。

目の前に分かれ道が現れる。右に行くか、左に行くか。選ぶべき根拠はない。
強いて言うなら――勘に任せるより他にない。
「あーもうっ! どうして肝心な時に出て来ないのよメップル達は!」
苛立ちが頂点に達したなぎさがその場でどん! と足を踏み鳴らした。
森の中の土はほどよく湿っているのだが、そこだけ乾いているみたいに硬くて
踏み応えがあった。
「いっつも『なぎさーっ!』って言って頭にぶつかって来るくせにー!」
まあまあ、と言うようにほのかがなぎさに目を向ける。
「なぎさ、メップル達だって私たちのこと探しているはずよ」
「そりゃそうだけどさあ、もうっ! このパーク内こんなに広いなんて
 ぶっちゃけあり得なーい!!」
思えば、今朝からずっとこの中で人探しをしているような気がする。
なぎさ達がフェアリーパークに着いたときにはのぞみや咲、ラブ達との待ち合わせ時間を
大幅にオーバーしてしまっていた。
それから探し回ったのだが、結局会えたのはノーザたちの出現で異変が起きてからだ。
メップル達の探索を諦めるつもりは毛頭ないが、愚痴の一つも言いたくなった。

最後に一発、地面をどすっ! と踏んで多少気が晴れると、
「じゃあこっちの方行ってみようか」
となぎさは気を取り直して左の道を選んだ。
「そうね、じゃあこっちに」
とほのかがそちらに足を向ける。……と、なぎさの足元がむくむくと動いた。
「こらーっ!!」
「わっ!?」
なぎさの真下の地面が動いたかと思うと突然現れた青と橙に彩られた巨体、かつて
ダークフォールの幹部として咲や舞と戦ったドロドロンの出現に
なぎさの身体は振り落とされ地面に転がる。
「なぎさ!」
「なぎささん!」
ほのかとひかりが駆け寄り、なぎさはすぐに立ち上がるとドロドロンを見据える。
ドロドロンは興奮したように三人を見ていた。

「おおおおお前たちいい加減にしろよー! さっきから人の頭どんどん踏んでさ!!
 僕もう怒っちゃったんだからなー!!」
「え!? ひょっとして私!?」
「そうだよ! 僕が、僕の、……あれ、とにかくぅ……人の頭踏むなよ!!」
「ご、ごめん!!」
咄嗟になぎさが謝ったもののドロドロンは
「謝ったって許さないもんねー、プリキュア!!」
ドロドロンが両手の指から蜘蛛の糸を噴出させる。

「わあああ何なのよー!?」
「なぎさが踏んだりするからー!!」
「だってしょうがないじゃない知らなかったんだからー!!」
「とにかく逃げましょう!!」
ドロドロンに背を向けて一目散に三人は逃げ始めた。
「ふんだ、逃げらんないぞー!」
糸を出しつつドロドロンが後ろから追って来る。
「やばっ、追いつかれる!」
なぎさが覚悟した時、その声は空から降ってきた。

「なぎささんほのかさんひかりさん!」
「早く逃げて!!」
明るく輝く精霊の光。天空に満ちる月キュアブライトと大地に薫る風キュアウィンディ、
咲と舞が変身した二人のプリキュアが精霊バリヤーでドロドロンの糸を弾き返す。
二人はそのままなぎさ達とドロドロンの間に着地した。
「ブライト! ウィンディ!」
「早く逃げてください!」
両手でバリヤーを張っている二人の背中に
「ごめん、ありがとう!!」
と声を投げかけ、なぎさ達三人はその場を離れた。

「おおおお前たち、いっつもいっつも僕のジャマばっかすんなよ!」
ドロドロンが怒りを露にする。
「ウィンディ! いくよ!」
「ええ、ブライト!」
――とにかく、なぎささん達から引き離す!
ブライトとウィンディはそれを中心に考えていた。ドロドロンを倒すのは
二の次だ。なぎさ達を安全なところまで逃がすのが第一目標である。
「光よ!」
バリヤーを解除すると同時にブライトは飛び上がり、満月の形の黄緑色のビームを放つ。
それをドロドロンではなく、やや離れた川のほう目掛けて放った。ビームは水面に広がる。
「風よ!」
ウィンディが風を身に纏いながらブライトと共に川面のビームの上に飛び乗った。
風に押されてボートに乗っているかのように二人は川を下流に向けて滑っていく。
「ふっふーん、逃げたって無駄だもんねー!」
ドロドロンは川に逃げた二人を見て上機嫌で後を追ってきた。そのままどぼんと
川に入る。
「僕は水を吸えば吸うほど強くなれるんだぞー!」
川の水を吸い、ドロドロンの身体が肥大化していく。

 * * *

「メポー!?」
「ミポッ!?」
メップルとミップル、ポルンとルルンは既に合流しなぎさ達を探し回っていたが、
すぐ側を流れる川の水が突然増えたので思わず叫び声を上げた。
下流にいるドロドロンの肥大した身体が川をせき止めた形になり、上流では
川から水が溢れ出し始めたのだ。
「メポッ! 流されるメポ!」
「逃げるポポー!!」「ルルーッ!!」
短い足でちょこちょことメップル達四人は走る。
「駄目ルル! 追いつかれるルル!」
「諦めちゃ駄目メポ! 頑張るメポ!」
しぶきがメップル達の足に掛かる。このまま水に呑まれるとまた離れ離れになってしまう、
そう思った瞬間に身体が誰かに抱き上げられて宙に浮かぶ。
「メポッ!?」
メップル達を抱き上げた誰かは風のように疾走するとあふれ出す水を置いて川岸から離れた。

もう十分、大丈夫だろうという距離を取って彼はメップル達を地面の上に置く。
「……メポ!?」
「ミポ!? ……キリヤミポ!?」
メップルとミップル、ポルンは驚愕の眼差しでその人物を見上げた。
ルルンは不思議そうな顔をしている。

「今、あっちからメップル達の声が!」
木々の向こうからなぎさの声がした。
がさがさと草を掻き分けるようにしてなぎさとほのか、ひかりが
キリヤとメップル達の前に姿を表す。
「なぎさメポ!」「ほのかミポ!」
メップル達はすぐになぎさとほのか、ひかりに飛びついていったが
なぎさはキリヤの姿を見て一瞬表情をこわばらせた。
「助けてもらったメポ」
メップルがなぎさにそう告げる。キリヤはいつかの姿――なぎさ、ほのかと戦った時の
姿をしていた。
なぎさはちらりとほのかを見やる。呆然としていたほのかの口から「キリヤ君……」
という言葉が漏れた。ひかりはその名を聞いてはっとする。

入澤キリヤ。ひかりはその名前を何度か聞いたことがあった。


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