前へ 次へ

「つぼみ! えりか!」
「シプレ! コフレ!」
奇怪な姿に変貌したフェアリーパーク内を、キュアドリーム達6人はつぼみとえりか、
そのパートナーの妖精たちを探して走り回っていた。
パーク内にはアトラクションが多い。
その片隅にでもいるかもしれないと思うと探索も勢い細かいところを良く見ていく形になる。

「ここはっ!?」
「巨大迷路だった場所よ!」
ジェットコースターのレールの上を探したドリームたちが次に目をつけた
アトラクションは、高さ3メートルくらいの木々が壁のように立ち並んで作られている
巨大迷路だった。
本来のフェアリーパークでは楽しいはずのアトラクションだが、
今は木々のあちこちに不気味な色合いの花が咲いたり木の一部が腐ったように崩れていたりと
総じて恐ろしげな雰囲気に包まれている。
「じゃあ、この中探そう!」
「待って、手分けした方がいいわ」
知性のプリキュア、キュアアクアがすぐにでも飛び込んで行こうとした
ドリームを制止した。
「手分け?」
「ええ。私と……」
アクアはちらりとローズを見やると、ローズが大きく頷いた。
「私たちは出口の方に回ってそちらからつぼみたちを探すわ。
 ドリームたちも、中で道が分かれていたら手分けして行った方が早いと思うわ」
「分かったわ、アクア」
了解とばかりにキュアミントが軽く手を握る。
スタート地点から突入したドリーム組は分岐点ごとに分かれて行ったので、
すぐに4人はばらばらになった。暗い迷路の中を歩き回りながら
つぼみたちの姿を探す。時折、
「つぼみちゃーん、えりかちゃーん」「つぼみさーん、えりかさーん」
というドリームやミントの声がレモネードのところまで聞こえてきた。

「つぼみさーん、えりかさーん」
レモネードもあたりをきょろきょろと見回しながら歩いて行く。二人一緒に居れば
いいけど、とレモネードは思った。こんな不気味な空間に、変身もせずに独りでいるのは辛い。

レモネードの背後でがさっと音がした。振り返ると赤い髪を持つ人の姿がちらりと見えた。
「ルージュ! また道が合流したんですね!」
たたっとレモネードはその人影に駆け寄ろうとして足を止めた。
「あなたは……!」
一瞬、その人物はキュアルージュに見えた。だが実際には違っていた。
良く見ればキュアルージュとは似ても似つかない。
「ダークネスストライク!!」
咄嗟にレモネードはプリズムチェーンを放ち、赤く輝く炎の宿した
彼女を止めようとする。だがダークルージュが炎を3発纏めて蹴り出す方が
一瞬早かった。
「きゃあああ!?」
灼熱の炎は逆にプリズムチェーンを伝いレモネードに迫る。つんざくような悲鳴を上げて
レモネードは地に倒れた。

「レモネードッ!!」
レモネードの悲鳴は迷路の中にいたプリキュアたち全員に聞こえていた。
誰もが声の聞こえた方角に走る。
「レモネード!!」
一番近くにいたキュアルージュだったが、声の方に走ったものの壁に阻まれ
苛立ちを覚える。
「えーい!!」
一々迷路に従っていられるか、とルージュは壁を跳び越える道を選択した。
助走をつけてジャンプするとふわりと身体が宙に浮く。一瞬、だが確実に、
彼女の無防備な姿が空を待った。
「ダークネスアロー!!」
ルージュがはっと気づいた時には自分の真下から激流の矢が迫ってきていた。
「ア……アクア……!?」
三本の矢に貫かれルージュの身体が地に落ちる。
「ぐ……」
立ち上がろうとしたルージュの視界にキュアアクアと良く似た、しかし全然似ていない者の
姿が入った。

「あんた……ダークアクア……」
ダークアクアは腰に片手を当て、ルージュを冷たく見下ろしていた。
ルージュのそばにはレモネードも倒れていたが、手を伸ばすことはできなかった。

「レモネード!!」
レモネードの悲鳴を聞いて駆けつけたミントがようやくレモネードが倒れている区画に
足を踏み入れる。
だが、
「ダークネスチェーン!!」
「プリキュアエメラルドソーサー!」
金色にぎらつく鎖が彼女を捕縛せんとばかりに伸びてきた。すぐにソーサーで弾き飛ばそうとした
ミントだったが、チェーンがソーサーを突き破る。捕縛ではなく、唸るようにしなったそれは
ミントの身体を幾重にも打ちつけた。
「う……」
少しの間耐えていたミントだったが、やがて地面に崩れ落ちる。
「意外と大したことないんですね」
嘲るようなキュアレモネードの声がすぐ近くに聞こえた。

――ダークミントは……?
キュアミントは痛みの中で視線を動かし四人目のダークプリキュア、ダークミントを
探そうとした。キュアミント自身のコピーであり、かつてミントは彼女と戦った。
戦いの最後にはダークミントもキュアミントの気持ちを理解してくれた……と
キュアミントは信じている。彼女の姿は倒れたミントの視界にはなかった。
――私たちとの戦いには参加しないことにしたの……?
そうであってほしいとキュアミントは願わずにはいられなかった。


「油断はできないわ。まだ三人。残りがまだその辺りにいるはずよ」
余裕綽々のダークレモネードに対し、ダークアクアの声は冷静だった。
「まあ、すぐ来ると思うけど……」
「みんな!」
キュアドリームの声が聞こえた。
来た! とダークルージュ達が構える。
「みんな、だいじょ……」
「ダークネスチェーン!」
「わっ!?」
ダークレモネードの放った二本のチェーンにのぞみは両腕を取られ、近くの木に
両腕を広げた形で叩きつけられた。
「ダークネスストライク!」「ダークネスアロー!!」
はっと目を開いたドリームの眼前に赤黒い炎と激流の矢が渦をまいて迫る。
「キュアドリーム!!」
ルージュとレモネード、ミントがなんとか身体を動かし彼女を庇おうとしたが間に合わず、
爆音と爆炎がキュアドリームを包んだ。


「急がないと!」
キュアアクアとミルキィローズは焦っていた。
仲間達が敵に襲われているのは分かっているが、なかなかその場にたどりつくことができない。
先程から同じところをぐるぐる回っているかのような錯覚さえも覚える。
今、またダークルージュとダークアクアの協力技による爆炎があがった。
「もう、やってらんないわ!」
遂にローズが業を煮やした。爆炎の上がった方角にある壁に向けて走ると、
「アクア、私についてきて!!」
と道をふさいでいる大迷路の壁を蹴りぬける。
「ええ!!」
アクアとローズは、ローズが穴を開けた壁を何枚も何枚も通り抜けた。


キュアドリームの周りにもうもうとあがった水煙と炎は、しばらくしてから
少しずつ落ち着き始めた。ダークルージュ達の眼から隠されていた、ぐったりとした
キュアドリームの姿が徐々に見えてくる。
「何……?」
予想外のものが見え、ダークルージュは思わず驚きを口にした。
キュアドリームは身体のあちことに傷がついてはいるが、ダメージはそれほどでもない。
彼女の上に覆いかぶさったダークドリームがダークルージュ達の攻撃を吸収して
しまったらしく、ぐったりと横たわっている。

「ダークドリーム……あんた……」
ダークルージュは苦虫をかみつぶしたような表情をした。
「う……」
と、ダークドリームが低く唸るような声をあげて弱々しく眼を開ける。
ほぼ同時に、ローズの拳でキュアミントのすぐ横にある壁に穴が開いた。
「みんな!!」
とアクアとローズがこの区画に飛び込もうとしたが、
「ダークネスソーサー!」
放たれた深緑色の盾が二人の進路を阻む。二人はしたたかに顔を打ち付けた。

――ダークミント……
キュアミントは彼女がここに来たことが分かってひどく悲しくなった。倒れているキュアミントの
位置からは彼女の背中しか見えない。彼女が今何を考えているかは分からないが、
やはり彼女とは分かり合えなかったのだろうか……、


「みんな、もうやめようよ……」
ダークドリームがかすれた声をあげた。
ふん、とダークルージュは鼻を鳴らすとコツ、コツと靴音を立ててダークドリームと
キュアドリームに近づく。地面に脚を伸ばした格好で座っているキュアドリームの脚の上に
横たわっているダークドリームの上にしゃがみ込むと、
軽く顎をつかんでぐいっと自分の方に顔を向けさせる。
「ちょっと」
乱暴なやり方にキュアドリームが抗議の声をあげるがダークルージュは意に介さなかった。

「みんなって? 誰?」
「それは、ダークルージュとダークレモネード、ダークミントとダークアクア……」
話にならない、とでも言いたそうにダークルージュはダークドリームの顎を放すと立ち上がった。
「『やめようよ』なんて言われる筋合いじゃないわね」
「そうですよ、仲間でもなんでもないんですから」
ダークレモネードがダークアクアに同調しながら手近にあった岩の上にぴょこんと座った。
脚を組み、悠然とした表情でダークドリーム達を見降ろしている。

「それでも……」
ダークドリームは地面に両腕をついて身を起こそうとしたが、力が入らずに崩れ落ちてしまった。
それでも言葉だけは続ける。
「みんなが、私のこと仲間だと思ってなくても……わたしはみんなのこと仲間だと思ってるから。
 ねえみんな、もう止めようよ! ここは本当はすごく楽しい遊園地で……ここで遊べば、
 みんなだってきっと笑顔になれるよ。だから……」
「だから?」
必死に言葉を振り絞るダークドリームに、ダークルージュは肩をすくめた。
「笑顔とか楽しいとか、そんなのは私たちには必要ない」
「それはみんながまだ、そういうことを知らないから……習ってないから……」
「習ってないことなんて私たちに必要なんですか?」
座ったままのレモネードが冷笑する。
「そうね、必要なことならシャドウ様が全て教えてくれたはず。
 私たちが知らないことは、必要ではないことよ」
「ダークアクアッ!!」
キュアアクアがソーサーの向こうから吼えた。
何? とうるさそうにダークアクアが目を向ける。
「ダークアクア! あなた、前は一人で十分だとか何とか言ってたじゃない!」
「ええ、その通りよ」
何を今更、とダークアクアは言葉を繋いだ。
「でも、あなたは今ダークルージュやダークレモネードたちと一緒に
 私たちの前に現れた! それはあなたが仲間の存在を認めたからじゃないの!?
 シャドウに習っていないことを、あなたが覚えたからじゃないの!?」
「勘違いしないでほしいわね」
ダークアクアは眉一つ動かさずに答える。
「私は仲間と一緒に行動している覚えはないわ。『プリキュアを倒す』という目的が
 たまたま一致しているからこうしているだけよ」
「ダークアクア!!」
昔の自分に似ていると思うと余計に腹が立つ。ソーサーを拳で叩き割ろうとして、
キュアアクアとミルキィローズは抵抗のなさにつんのめった。

「ダークミント……!?」
ダークネスソーサーが消えた。キュアアクアとミルキィローズが転がりこんでくる。
ダークアクアはソーサーをしまったダークミントの背中をきっと見つめる。
「ダークミント、あなたどういうつもり?」
「……私は、プリキュアを倒す気はないわ……」
「どういうこと」
ゆっくりと振り返ったダークミントの表情は憂いに沈んでいた。すぐにでも攻撃しようと
気持ちを昂ぶらせていたキュアアクアとミルキィローズは少し様子を見ようと、
警戒しながらも攻撃は控える。
「私は、……ダークアクア、あなた達を守りたかっただけ……」
「ダークミント、あなた……」
「私は誰かを守ることの強さをキュアミントに教えられたわ……そして誰を守りたいかと
 考えた時、一番に浮かんだのがあなた達だったから」

その言葉はその場にいた全員に聞こえていた。地に倒れているキュアミントにも。
――分かってくれていた……
そう思うと、キュアミントは再び身体の中に力が戻ってくるような気がした。

だがダークアクアにはダークミントの言っていることは許容できない。
つかつかとダークミントに詰め寄る。
「私たちを守る気はあっても、プリキュアを倒すことはできないと言うの!?
 あなたといいダークドリームといい、シャドウ様を裏切る気!?」
「それは……」


前へ 次へ


コラボSS置き場へ戻る
indexへ戻る