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「や、やれるもんならやってみろよ!? 僕のデータはもうクラインなんかの
 自由にはならないんだぜ!」
「今、クラインとその部下たちがお前のデータを復旧している。
 すぐにお前の寿命データは元通りにメビウス様の支配下に置かれる。だが……」
イースは鎌を持つ手に力を籠めた。
「私はメビウス様に特にお願いし、この手で貴様を処分することを許可された。
 この鎌はお前の処分のためにメビウス様から直々に渡されたものだ。
 まだ寿命管理が行き届いていなかった頃、国民に安らかな即死をもたらすために
 使用していたものだそうだが」
「な、何なんだよ!? お前、僕に何か恨みでもあるのかよ!?」
「……他人の獲物を奪うな」
イースの声が一際冷たく響いた。
「え、獲物?」
「プリキュアを倒すのはこの私だ」
それがコーザが聞いた最後の言葉になった。イースは右手に持った鎌を大きく回転させる。
男の悲鳴が辺りに響き、ルミナスはおもわず目を閉じた。
イースは地面に倒れた男の身体を汚いものでも見るかのように見ていたが、
やがてそれも跡形なく消えていく。
イースはルミナスに目を向けた。ルミナスもまた真っ直ぐにイースの目を見つめる。
「プリキュア……」
イースの低い呟きからはその感情を読み取ることができない。ルミナスもまた小さな声で

「……絶対に、渡しません」
と答える。赤い瞳とエメラルドグリーンの瞳はしばしの間視線をぶつけ合っていたが、
やがてイースが視線の圧力に押し負けたかのように目をそらした。
「残念だ」
右手の鎌を消してイースは呟く。
「今日は処分を終え次第直ちに帰還するよう厳命されている……」
誰にともなくそう言い残してイースはルミナスたちの前から姿を消した。


シロップの上から見ていたナッツたちはほっと緊張感が抜けたが、ルミナスは壷を
地面の上に置くと、
「ココさん、私も中に入ります。多分もうこの壷が狙われることはないですから……」 と告げる。ココは大きく頷いた。
「ココも行くココ! ナッツたちといっしょに新型ミラクルライトの力をプリキュアに
 届けるココ!」
シロップが急降下して壷の前に降り立った。
「そうムプ! みんなでいくムプ!」
「そうププ!」
「……」
ルミナスは少し考えた。先ほどの闇の波動はやはり気になる。
ここは全員で行かないとプリキュアを助けられないかもしれない……。
「そうですね、みんなで行きましょう!」
「行くココ!」
その場の全員が壷の中に飛び込んだ。


「プリキュアー! みんなー! ミラクルライトの力を受け取るナツ!」
やっとの思いで立っていたプリキュアたちがナッツの声に気づいて空を見上げる。
シロップに乗ったナッツやタルトたちの持つ新型ミラクルライト・MSYFの光が
プリキュアたちに降り注いだ。一同の身体が光によって癒されていく。
「なんですって……」
ミズ・シタターレが唖然とした表情を浮かべる。シャイニールミナスがブラックと
ホワイトの後ろに降り立った。
「やはり正面から堂々と戦ってこそということのようだな」
キントレスキーが一同を見回す。ミラクルライトを掲げるココとナッツ、ムープとフープ、
タルトとシフォン。すっかり体力気力共に回復したように見えるプリキュアたちと
ミルキーローズ。
来たばかりのシャイニールミナスはまだこの世界自体に慣れていないようだが、
ブラックとホワイトの後ろにすっと立っている。そして……、
満と薫はキントレスキーが見たことのない姿をしていた。
ゆったりとしたワンピース形式のロングスカート。月と風の精霊の力が強く
そこから感じられる。
その代わりというように咲と舞はブライトとウィンディから
ブルームとイーグレットの姿へと変身していた。
ブルームが辺りを見回す。風景の絵はほとんど溶けてしまって世界自体が溶けつつ
あるような錯覚を抱かせた。

「ここは私たちの住む世界じゃない……」
ブルームの言葉に呼応するようにイーグレットが
「そう、私たちの世界はもっと美しくて、家族や友達、大切な人が沢山いるの」
と答える。
「キントレスキー、ミズ・シタターレ、あんた達を倒して私たちの世界に帰るっ!」
ブルームの言葉を合図にしてキュアブラック、キュアホワイト、シャイニールミナスが
構えた。他のプリキュアたちもそれに続く。

「みなぎる勇気!」「溢れる希望!」
「光り輝く絆とともに!」
「エクストリーム・ルミナリオー!!」

「精霊の光よ!」「命の輝きよ!」
「希望へ導け!」「すべての心!」
「プリキュア・スパイラルハート・スプラッシュスター!!」

「邪悪な力を包み込む、きらめく薔薇を咲かせましょう!」
「ミルキィローズ・メタルブリザード!!」

「クリスタルフルーレ! 希望の光!!」
「ファイヤーフルーレ! 情熱の光!!」
「シャイニングフルーレ! はじける光!!」
「プロテクトフルーレ! 安らぎの光!!」
「トルネードフルーレ! 知性の光!!」
「五つの光に勇気を乗せて!」
「プリキュアレインボーローズ・エクスプロージョン!!」

「悪いの悪いの飛んで行け!」
「プリキュア・トリプルフレーッシュ!!」
キントレスキーとミズ・シタターレは避けなかった。協力してプリキュアたちの技に
対抗しようとしたが、彼らの姿は光の渦の中でゆっくりと消えていった。
それと同時に雨が止む。
「あそこが出口ココ!」
上空を指してココが叫んだ。咲と舞がペッタンコした樹のちょうど真上の空が割れた
ように穴が開き、白い光が差し込んできている。
プリキュアたちの身体は吸い込まれるように浮かび上がった。
「え!? ひょっとして……!?」
「このまま元の世界に戻れるの!?」
アクアとベリーの言葉に「きっとそうココ」とココが答える。真っ白な光の中を通り
一同が出たのは、時計の郷。いつの間にか変身は解けていた。
「よう、久しぶりだな!」
「無事に出て来れたんだね、良かったね!」
親しげな声に咲と舞が見上げると、大時計からミニッツとアワーズが手を振っていた。
「王女様と光の園のクイーンから頼まれてるんだ」
「君たちをこれから緑の郷まで送り届けるよ。はぐれないようにみんな手を繋いでね」
「あの子たちは……?」
ひかりの不思議そうな顔に咲は「時計の針の精霊だよ。友達なの」と簡単に答え、
「じゃあみんなはぐれないように……」
と円を作って手を繋いだ。十六人で繋ぐ輪は大きい。
「いいかい、じゃあ送るぞー」
ミニッツの声が次第に遠くなる。気がつくと十六人と精霊達は夕凪町、大空の樹の下に
立っていた。木漏れ日が優しく少女達を照らしている。
「ただいまっ!」
咲の声で一同はようやくほっとした表情で笑いあった。

-完-

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