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「プリキュアファイヤーストライク!」
りんが火の玉を蹴り上げると辺りが昼間のように明るくなる。
雨は相変わらず勢いよく降り注いでいた。
キントレスキーは普段の姿よりも更に筋力を増強し、
「はっ!」
拳を叩き込むと真二つに大地が割れる。プリキュアたちは二手に分かれ跳びあがった。
キントレスキーはピーチベリーパインを三人纏めて足首を掴み投げまわすと
大地に叩きつける。更にアクアを追うと弓を構えていた彼女に対し、
「遅い! 飛び道具は距離を詰められては意味がない!」
と叫び
「アクア!」
とファイヤーストライクを放ったルージュをぎろりと見るとアクアを肩を掴み
その身体を楯にする。
「あ、アクア!」
ルージュの前でキントレスキーはぽんとアクアの身体を投げ捨てた。
「大人数で一人を相手にするときは同士討ちを最も警戒すべきだ。
 大人数は却って戦いにくい場合も多々ある」
ウィンディが風をとばしアクアの身体を地面に優しく着地させると、
ホワイトは「みんな、あの人を囲むように動いて!」と指示を飛ばした。
キントレスキーを中心にした半径十メートルほどの円をプリキュアたちが作る。
「私が止めます! プリキュアプリズムチェーン!」
レモネードから伸びるチェーンがキントレスキーの身体に巻きつき捕縛する――が、
キントレスキーは逆に腕でチェーンを掴むと、
「身体が軽すぎる!」と逆にチェーンを操りレモネードの腕に巻きつけると彼女をハンマー投げのように回す。チェーンの長さはちょうど十メートルほど。すなわち、
「レモネードッ!」
食い止めようとしたドリームが勢いに負けてなぎ倒され隣の満をなぎ倒し、
ドミノ倒しのようにして最後のミントまでプリキュアたちが押されていく。
「きゃあああ!?」
プリキュアたちが一山になって崩れた一番上は目を回したレモネードである。
「覚悟しろプリキュアその他!」
キントレスキーが飛び上がり勢いに乗ってプリキュアの山に迫る。
「みんなは絶対傷つけさせない!」
山の中からブライトとウィンディが飛び出して精霊の力によるバリアを展開。
ミントが目を回したままのレモネードを抱えて後ろに下がると、
満と薫がキントレスキーの後ろに回りエネルギー弾を連射する。

「小ざかしい!」
キントレスキーは両腕を振り回してエネルギー弾を一掃すると満と薫の背後から
跳び出したブラックとホワイトの蹴りを避け、上空に一旦待避しそのまま落下すると
ブライトの放つ満月のビームに頭から突進する。
「はあああ〜……!」
「身体を鍛え抜けば光線技など恐るるに足らぬ!」
気合を入れるブライトとキントレスキーが真っ向からぶつかり弾き飛ばされたのは
ブライト。ホワイトが咄嗟に飛び出しその身体を受け止めるもそこに
キントレスキーが走り迫る。
「ホワイト!」
ローズが大地を蹴りキントレスキーの足場を崩そうとするがぬかるんだ土で滑り
思うように大地を割ることができない。
「ホワイト、ブライト!」
キントレスキーの背後からピーチが駆けつけるとキントレスキーは身を翻し
ピーチの身体を胸板と腕の間に抱きしめて締め上げる。
「ピーチッ!」

数秒後、ぐったりとしたピーチの身体が大地に投げ出された。ブラックがウィンディが、
ドリームがキントレスキーを睨みつける。
「どうした。かかってきていいんだぞ」
「言われるまでもないわ!」
ウィンディが叫んだ――その直後、彼女の全身から力が抜けた。ウィンディだけではない。
プリキュアたち全員が立っていられなくなり泥だらけの地面に倒れた。
「な……なんで……?」
その耳に聞こえてくるのはミズ・シタターレの高笑い。
彼女はキントレスキーの隣に降り立った。
「ハ、ハナ……」
ブライトが彼女の名前を呼ぼうとするが言葉が続かない。
「私の名前を間違えることもできないようね」
満足したように彼女は呟く。

「おい。奴らに何をした」
「この雨よ」
ミズ・シタターレは手をかざして降り注ぐ雨を掌に受ける。
「滅びの力が混ぜてあるわ。少し濡れるくらいなら大したことはないけれど、
 この中で大暴れしたならプリキュアの服を越えて皮膚にも存分に染み込んだでしょうね。 ちょうど今、その効果が現れたってわけ」
「相変わらず小ざかしい手を」
キントレスキーは吐き捨てるように呟いた。「あらキンちゃん」とシタターレは答える。

「あなたみたいに力技一辺倒でいくだけが能じゃないわ。……どうやら後はとどめを刺していくだけのようね」
「ふむ。止むを得んな」
キントレスキーとミズ・シタターレが勝手なことを話し合っている間に満と薫は
よろめきながらも立ち上がった。両腕を広げてバリアを展開しようと試みるが、
「うっ……」
二人はまた地面に倒れた。泥水がばちゃんと跳ねる。シタターレはそれを見て高笑いする。
「アクダイカーン様に産み出されたからってこの雨に耐えられるとでも思っていたのかしら?
 精霊の力にかぶれた裏切り者にそんな力はないわ」
ブラックは倒れたまま、自分の目の前に倒れこんできた満に手を伸ばした。赤い髪に手が届いた。

    * *

「ルミナス・ハーティエルアンクション!」
時折放つこの技も回避されてしまう。更に壷の中からどくりと闇の波動が伝わってきた
気がしてルミナスは一瞬気を取られた。
「ああっ!?」
石に足を取られてばたりと倒れる。
「はーい、お嬢さん。追いかけっこはおしまいだね」
ルミナスはすぐに立ち上がるときっと彼をにらみつけた。
「そんな怖い顔するなよ。それに、どうせプリキュアはもう出てこれないんだから」
「そんなことありません! なぎささんもほのかさんも、他の皆さんも絶対出てきます!」
「甘いなあ。その壷の中には僕が入れた情報も入ってるんだよ?」
「ど……どういうことですか!?」
「プリキュアはこっちの世界での記憶をなくしてるんだ。フィーリア王女と光の園の
 クイーンがその中にプリキュアたちを入れたとき、僕が作った偽情報も混ぜ込んで
 彼女たちがその中で生れてずっと暮らしていると思うように仕向けたのさ」
「そ……そんなこと……たとえそうだとしても、なぎささんたちは必ず
 思い出してくれます!」
「どうかなあ。仮にそうだとしても……」
コーザは話すのが嬉しくてたまらない様子だった。
「罠はもう一つしかけてある。あの満、薫って奴らの封印を解かないと
 出てこれないんだろ? 偽情報の中には、あいつらの封印を解くと碌でもないことが
 起きるっていうのも入ってるんだ。だから、やっぱり出てはこないよ。
 プリキュアにも僕ほどじゃなくても頭のいい奴はいるんだろ?
 半端に頭のいい奴は一番騙されやすいんだ。直感では違うと思っていることでも、
 筋道のたった情報を適切に与えられれば直感の方を押し殺しちまうからね。
 言うことに説得力もあるから、他の奴もそいつの判断に従うしな。
 つまり、その中のプリキュアたちが封印を解くのは絶対にないってこと」
「そ……そんなこと……」
「そうなんだよ」
男はルミナスに楽しげに告げた。
「だから、いつまでこんなことをやっていても結局は同じことさ。
 プリキュアはもう出てこない。だったら今のうちにぶち壊してしまった方が
 君たちも楽になれるんだよ」
「プリキュアは……」
ルミナスは自分にもココにも聞かせるように呟く。
「必ず戻ってきます。この世界に」
やれやれ、と彼は肩をすくめる。

「残念だよ。君たちが最初に僕の存在を知った人たちなのに。
 ラビリンスも結局僕がやったことだとは突き止められてないらしいし、
 これだけのことを成し遂げたのに誰にも知られていないのが少し寂しくてね……
 話を聞いてくれて嬉しかったけど、これでお別れだね」
男の両手に邪悪な気配が集まっていく。

    * *

「メロンパン……」
どちらが誰にとどめを刺すかでもめているキントレスキーとミズ・シタターレを
よそにキュアブラックが呟いた。
「満のメロンパンと咲のチョココロネ、食べるって約束したんだから……」
無理やりにブラックは身体を起こそうと膝立ちになる。
「元の世界に帰ったら……キャラメルマフィン苺チョコパイ、両手にスイーツ持つのも
 ありだよね……」
ようやく立ち上がったブラックがうずくまっているホワイトに手を差し出す。
ホワイトはその手に掴まって一度立ち上がろうとするも沈み、またゆっくりと
ブラックの手を握って立ち上がる。
「うん、絶対あり。私たちも大食い大会するって約束……したんだから……」
ドリームもまた立ち上がろうとする。
「しょうがないな……」とルージュがドリームを追いかけて立ち上がる。
「大会にはカオルちゃんのドーナツ持ってくから……みんなにも食べてもらいたいな……」
ピーチがベリー、パインと手を繋いだ。ブラック、ホワイトがブライトとウィンディ、
満と薫にも手を貸して立たせる。
「うん? なんだお前たち」
キントレスキーがプリキュアたちを睨みつける。
「私たちは……」ブラックの言葉にみんなが続ける。
「絶対、諦めない!」

    * *

「ルミナス、逃げるココ!」
ココがばっとコーザの顔面に飛びつき視界をふさいだ。
「ココさん!」
「いいから逃げるココ! 早く行くココ!」
「ふざけんなっ!」
男はココを顔面から引き剥がすと大地に叩きつけた。
「これで本当に終わりにしてやる!」

ぎゅっと壷を抱えたルミナスに男の両手から放たれる邪悪な力がルミナスに迫る。
ルミナスは壷を自分の身体でしっかりとガードした。

「ココ! ルミナス! 『新型ミラクルライト・MSYF』の力を受けるナツ!」
シロップに乗ったナッツ、タルト、ムープとフープ、シフォンの持つミラクルライトの
光がひかりとココに降り注ぐ。男の放った邪悪な力が光を受けて解けるように消えた。
「ハーティエルアンクション!」
初めて男がその技を受け動きを止める。
「てめ、弱いくせにいきがりやがって……!?」
苛立った男の首筋を冷たいものが捕らえた。男の姿を見てルミナスがはっと息を飲む。
「同感だな」
響いてきた言葉は少女のもの。男の後ろに浮かんだ状態で漆黒の鎌を男の首に
今にも刈り取らんばかりに掛け、冷徹な視線で彼のことを見下ろしている。
黒を基調にした服にはラビリンスのものと思しき赤いダイヤのマークが輝いている。
「き、貴様、誰だ!?」
「我が名はイース。ラビリンス総統メビウス様がしもべ。
 国民番号KZ-105967、コーザ、お前の処分に来た」
「処分だと!?」
「その通り。勝手に極秘データを盗み出したこと、及びそれを利用したことでお前の
 生存は今日までとメビウス様が決定された」
ひかりは淡々と語る少女の言葉を聞きながら強く壷を強く抱きしめた。
壷からは闇の波動が相変わらず伝わってくる。


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