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「そ、それってどういうこと!? 封印を強くするのに満と薫の身体を使うって……!?」
ブライトの疑問にローズは「私も知らなかったんだけど、」と答える。
「封印する時に、誰かの身体を封印の一部として埋め込むと封印が強化されることがある
 そうなの。満と薫はそれを狙ったのね。
 だから、光の園のクイーンとフィーリア王女は満と薫を……」
封印の一部として埋め込んだのよ、あまり思い出したくないけど。とローズは続けた。

    * *

「封印の一部になるってどういうつもりミル!? 危ないミル!」
反対するミルクを見て満と薫は優しく微笑む。
「大丈夫よ。プリキュアがきっとすぐに助けてくれるから」
「私たちはしばらく動けないけど、みんなのことお願いね」
「満さん、薫さん!」
ルミナスとミルクの見守る前で光の槍に貫かれるようにして満と薫は姿を消した。

    * *

「じゃあ薫さんはあそこにいることで敵が出てくるのを防いでたの!?」
ウィンディの言葉を聞きながらアクアは目を閉じた。……つくづくひどい間違いをした。
「そういうことよ。あなたたちが力を取り戻すのに予想外に時間がかかったので
 カレハーンたちは緩くなった封印の網目から出てきてしまったけれど……、
 キントレスキーやミズ・シタターレの復活だけは防いでくれたんだと思うわ。
 ――もっとも、今の感じだと敵の方は以前に戦ったときより弱くなっていたみたい
 だけど……油断は禁物ね」
「そういえば、何で私たち記憶なくしてたりずっと前からこの世界にいるみたいな
 気持ちになってたのかしら?」
ベリーの問いにローズは「分からないわ」と答える。
「私たちもそれは予想外だったのよ。まさかこんなことになっているなんて」
「ルミナスは? ルミナスはどうしてるの?」
ブラックが尋ねるとローズはええ、と答える。
「ルミナスは外の世界で壷を守ってくれているわ。ラビリンスから隠れて」
「ラビリンス!?」
ピーチが叫んだ。
「これってラビリンスの仕業なの!?」
「ラビリンスはあらゆる世界の情報を集めているわ。これまでにプリキュアたちが倒した
 敵の情報も。それらの情報を基に、さらにパワーアップさせて再現したのが
 今回出てきた敵らしいの。つまり、ラビリンスの誰か――組織として動いたのかどうか
 は分からないけれど――が、これまでの敵の情報から今回出てきたような敵を
 作り出したらしいのね」
「じゃあ、その誰かが壷を見つけたら?」
「当然、壊されてしまう危険があるわ。そうなると中にいるみんなもどうなるか分からない」
ピーチにローズは淡々と答える。
「私も、ルミナスと一緒に壷を守ってたのよ。途中までは。プリキュアが二組くらい
 目覚めたらしいってことが外から分かったから、外に脱出するには封印を解いて
 キントレスキーたちを倒さないといけないから、それを伝えに来たの。
 この壷は中に入ってくることはできるけど外には基本的に出られない
 構造になってるのよ……まさかこんなことになってるとは思わなかったけど」
「ルミナス独りで大丈夫かしら……」
ホワイトが呟く。
「時計の郷にいるからそう簡単には見つからないとは思うけど。
 そうそう、時計の郷の精霊たちに頼んでこの壷の中は外と比べて時間を速く動かして
 もらってるから、外に出てみたら意外と時間は経っていないはずよ」
だんだん話が分かりにくくなってきた。みんながそう思い始めた頃、一同はちょうど洞窟に着いた。


「薫さん!」ウィンディが洞窟の中に駆け込む。薫が顔を上げた。
「薫!」
ブライトもその後に続く。変身してくる二人の表情を見て薫は確信した。
――思い出してくれたようね……
「薫さん、ごめんなさい! こんなに待たせて!」
「いえ……それよりみんな、」
薫は続いてやってくるプリキュアたちを見やった。
「思い出したの?」
「ええ、大丈夫。みんなちゃんと思い出したわ。大切なことを全部」
ウィンディの言葉に安心した表情の薫のそばにホワイトが走り寄ると、
「はい、薫さん」
と青い石を彼女に差し出した。薫のすぐ近くで石は青い光を放ち、ホワイトの手を
自然に離れるといつものようにペンダント状に薫の胸に収まった。
同時に薫の身体を覆っていた光の網が形を変え――手の枷が外れたので薫は久しぶりに
腕を下ろすことができた――、光の槍が薫の胸を貫く姿となって変化が止まる。

「これを引き抜けばいいんだね!」
早合点したブライトが光の槍に手をかけようとするが手は空を切るばかりで光の槍に
触れることはできない。目の前で見ていた薫は微かに苦笑し、説明する。
「プリキュアの必殺技を二種類以上当てればこの封印は解けると聞いているわ。
 ……でもあなた達、覚悟はいい?」
「覚悟?」
ドリームがきょとんとして尋ねる。
「この封印を解けば、遠からずキントレスキーが出てくるわ。
 彼と戦う覚悟はできているの?」
「当然!」
ぐっとブラックが拳を握り締めた。他のみんなもうなずいている。
「そう、それなら……。ブライト、ウィンディ。あなたたちにお願いがあるわ。
 封印の解き方は分かったでしょう? 満を捜して封印を解いて欲しいの」
「薫さん、満さんはどこにいるはずなの?」
「詳しい場所は私にも……でも、私が大地の封印、満が天空の封印を担当したから
 空に近い場所にいるはずよ」
空に近い場所……思索するように目を動かしていたブライトとブラックが、
「あっ! ひょうたん山!」と同時に叫ぶ。
「きっとあそこだよ! すごく高い山だもん!」
「じゃあ、あそこに行ってみればいいよね!?」
確認するようにブライトとブラックが詰め寄るので薫は「ええ」と頷き言葉を続けた。
「ブライトとブラックに心当たりがあるのなら、ウィンディとホワイトにも一緒に行って
 もらった方がいいわね」
「それなら、薫さんの封印は私たちに任せて」
ドリームがブライトに笑いかける。
「私たちとピーチ達とで、やってみるから」
「うん、じゃあ薫のことお願いね。えーと……この近くに舞たちが住んでた家が
 あるんだっけ。そこに戻ってくればいいかな」
「うんうん、私たちもそこに戻って……かれんさんこまちさん、いいですよね?」
振り返ったドリームにアクアとミントがええと頷く。
「じゃあ、薫!」
「必ず満さん連れてくるから!」
ブライトとウィンディが洞窟から駆け出し、ブラックとホワイトもそれに続く。
さて、とローズは背を伸ばした。
「じゃあみんな。この槍目掛けて必殺技よ。……ってドリーム!? 
 薫の正面から打ってどうするのよ。横からよ、横から」
薫もろとも槍を吹き飛ばしかねないドリームをローズは横に連れて行き構えさせる。
「じゃあ、私たちから!」
ピーチたち三人が構える。
「悪いの悪いの飛んでいけ! プリキュア・トリプルフレッシュ!」
「私たちも! プリキュアレインボーローズエクスプロージョン!」
プリキュアの必殺技が光の槍を包み消滅させる。久しぶりに自由になった薫の
身体がぐらりと倒れそうになるのをアクアが駆け寄り支えた。
地下から何かが唸るような声をする。薄い黄色の光の網が消えた代わりに、
真っ赤な目のような光が地下からこちらを睨んでいるのがアクアには見えるような気がした。
「みんな、家に行きましょう。いつ出てくるか分からないわ」
薫の身体を強引に抱き上げるとアクアは先頭に立って走り始めた。


「ブライトとウィンディは飛べるからいいな〜」
「じゃあ、ブラックとホワイトも一緒に飛びましょう!」
その頃ブライトとウィンディ、ブラックとホワイトはひょうたん山の頂上を目指していた
が、飛ぼうとしたブライトとウィンディは一旦地上に降りると
それぞれブラックとホワイトの両手を掴む。
「へ? どうするの?」
ブラックが不思議そうにしていると、
「きっとこれで飛べますよ」
ウィンディがにっこりと笑い両足に精霊の力を込めて飛び立った。ブラックとホワイトは
両手をブライトとウィンディに握られているのでやや遅れて地上から離れる。
「あ〜、なんか気持ちいい」
大ジャンプはできるものの空を飛ぶのはブラックたちにとって初めての経験だ。
「ブライト、私重くない? 大丈夫?」
ブラックが上を見ると「全然問題ないですよー」とブライトの声が帰ってくる。
ひょうたん山の頂上、巨大なひょうたん型の岩は太陽に照らされて明るく輝いていた。
四人はその前に着陸する。ブラックとブライトが満の居場所として睨んでいるのは
この岩の中である。
「たぶんこの中にいると私は思うんだよね!」
「ブラック、壊しちゃったら満さんが!」
ブラックはホワイトが止めようとするのも聞かず岩に拳を何発も打ち込み破壊する……と、
ぱっくりと岩が割れ空洞が現れる。
「当ったり〜! ほら、中に入れる!」「い、いいけど……」
ブラックが開けた穴からブライトとウィンディが走りこんだ。薫の時と同じような
薄黄色い光が暗がりの中に広がっている。
「……満っ!」
光の網に捕らえられた満の姿を認めてブライトは更に速度を上げる。
「満! 満!」
「……ブライト」
満が薄目を開けた……が、突進するブライトが満に抱きついて岩に押し付ける。
「満、ごめん! こんなに待たせて!」
「わ……分かった、ごめんは分かったわ……苦しいから!」
満に叫ばれてブライトはようやく満の姿勢に気づいたらしく
「またまたごめん」と苦笑する。
「薫は?」
「薫さんならドリームやピーチたちが封印を解いているわ。私たちは満さんのことを
 薫さんから頼まれて」
「そう」
満は目を閉じた。
「ごめんなさい……モエルンバは抑えられなかったわ」
ううん、とブライトとウィンディは首を振る。
「謝ることないよ」
「そうよ。満さんはずっと私たちを守っていてくれたんだもの」
「はい、満さん」
ホワイトが近づき赤い石を満に近づける。薫の時と同じように赤い光が満を包み、光の槍が現れた。
「これに必殺技を当てればいいんだね、よーし」
ぽきぽきとブラックが指を鳴らす。ブラックとホワイト、ブライトとウィンディが両側に別れほぼ同時に必殺技を放つと光の槍は消え去り満は一瞬よろめいた。
「満!」
ブライトが駆け寄って満の身体を支える。岩の更に奥から聞こえてくる女性の高笑いに
ブライトはげんなりした表情を浮かべた。
「あ〜、ハナミズターレの笑い声が聞こえるナリ……」
鼻水……? とブラックとホワイトがきょとんとした表情を浮かべるがウィンディは
「とにかく速く出ましょう」と皆をせかした。

「ねえ咲。メロンパン食べたい」
岩から外に出ると満が言い出す。
「そういえば私たち今日朝ごはん食べそびれたよね〜もうお腹ぺこぺこ」
ブラックも情けない声をあげた。
「ブライト、メロンパン家に残ってなかったかしら?」
ウィンディにブライトはうん、と答える。
「確かあったようと思う」
「だったら一度なぎさたちの家に寄って、メロンパンや作りかけの朝ごはん持ってから
 舞さんたちの家に行きましょうか……あの朝ごはん食べてみたいから」
ホワイトの提案でブラック、ブライト一同はもともとなぎさと咲、うららが住んでいた
家に立ち寄り満はメロンパンを沢山、ブライトとブルームは味噌汁の鍋やら
おにぎりやらを持って再度舞たちの家に向けて出発する。

――満……。
その頃薫は、水無月邸の庭で独り空を見上げていた。ブライトやウィンディに
任せておけば大丈夫とは思うが、やはり姿を見るまでは満のことが心配だ。
のぞみたちに聞いた話ではモエルンバは出てきていてもミズ・シタターレは
出てきていないそうなので自分と同じ状態だとは思うが……。
「……薫さん」
後ろから静かに呼びかけられ薫が振り返るとそこには水無月かれんが立っていた。
「ごめんなさい」
「……え?」
虚をつかれたように薫が聞き返すとかれんは続けた。
「私、あなたのこと……疑ってしまって」
「――いえ、当然の判断だったわ。それに安心したから」
「安心?」
「あなたがそばにいれば舞は大丈夫だろうと思って……舞や咲のこと、ありがとう」
「……」
かれんはそれには答えずに薫と同じように空を見上げた。
気がついてみると、この空の青は元いた世界よりもずっと淡い。
「薫ー!」「かれんさーん!」
元気な声に視線を下のほうに向けるとブラックとブライト、ホワイトとウィンディ、
それに満がこちらに向けて走ってくる。手には鍋やパンを持って。
「満……!」
薫がようやく笑顔を浮かべた。それを見てかれんはほっと安心した――が、
ブラックの持っている鍋を見て表情が固まる。

――あれは羊羹入り味噌汁……どさくさ紛れで食べないですむと思ってたのに……
  ああでも食べ物を粗末にしてはいけないわよねやっぱり……
「ただいま帰りました、かれんさん」
ウィンディが変身を解いて舞に戻った。
「これで全員集まったね。――この世界にいる人は」
ブラックもまたなぎさへと姿を戻す。


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